インタビューに答えるオシム氏。「W杯ではロシアとスペインがさらにいいサッカーを見せるだろう」と1年後を占った=村上写す
前日本代表監督のイビチャ・オシム氏(68)は、今も世界のサッカーの動向に目を配っている。アジアを突破し、4大会連続4度目のワールドカップ(W杯)出場を決めた日本に、かつての指揮官は何を期待するのか。朝日新聞社のインタビューに答えてくれた。(グラーツ〈オーストリア〉=村上研志)
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――オシムさんが前回W杯後に指揮した日本代表が、W杯出場を決めました。
「前に代表監督であっただけだ。私が選んだ選手たちも残っているが、予選突破した後に『あれが私のチームだ』というのは正当ではない。岡田監督に対しても、他の人々に対しても。
私が何を望んでいたかを言うことはできる。2人の俊足のサイドプレーヤー、2人の高いセンターFW、ずしりと安定した2人のDF。中盤には本物の実力を持った選手たち。遠藤、中村憲、中村俊は素晴らしい選手だ。ただ、決定力は難しかった。巻も矢野も高原も期待していたほどのプレーができなかった。
直近の試合は見ていないが、スピードのあるサッカー、より走るサッカーを試みていると聞いている。岡崎や内田といった若くて新しい選手が次々とアピールしていることは、非常にいいことだ。チームとしての前進と言える」
――W杯にどんな期待を。
「日本はやれる。前回はオーストラリアが厄介なチームになれることを見せつけた。今回は日本や韓国がそんなチームになれたらいい。しかし、それにはメンタリティーや個々の質といった問題が横たわっている」
――何が必要でしょうか。
「Jリーグを欧州の水準まで引き上げることだ。しかし、日本のクラブはそれほど裕福ではないから難しい。だが、リーグへの関心をもっと高めれば、多くを望めるはずだ。つまり、選手がリーグでストレスや重圧の下で生きるなら、代表でプレーする時にも同じように高いレベルを目指して振る舞うはずだ。
イングランドでは7日おきに『本物の試合』をこなしている。リバプールを相手に、マンチェスター・ユナイテッドを相手に、チェルシーを相手に、アーセナルを相手に、といったように。Jリーグのレベルを少しでも上げることが必要だ」
――1年前の欧州選手権はスペイン、今季の欧州チャンピオンズリーグはバルセロナ(スペイン)が見事なパスサッカーで優勝しました。
「それが今の流行で、私の望むサッカーだった。日本人選手に向くプレースタイルだと思う。日本人は非常に機敏で、とてもアグレッシブだ。ボールタッチも多く、個人技で良い場面を作り出せる。
しかし、パスサッカーの完成には練習しなければならない。バルセロナだって突然、あのようなサッカーを覚えたわけではない。年月をかけてあのサッカーをやるためのトレーニングをし、思考を植えつけてきたのだ。彼らは自らの道を進みながら、良い仕事をしている。なぜ日本代表が『東アジアのバルセロナ』になれそうにないと言うのかね? 毎日トレーニングして、連携を高めていくのだ」
――決定力不足が話題になります。
「現在の世界の流行は前線に身長の高い選手がいることだ。小さな選手だけでは世界を驚かすのは難しいと思う。相手から簡単にコントロールされてしまう。高さでも1対1でも。現在はどの1対1の局面も、フィジカル勝負に耐えられなければならない。例えば、67キロの玉田に対してイングランド代表DFテリーは90キロ。1対1の戦い方は学べるが、そうそう単純なものではない。いくら勇敢だったとしても、駄目なものは駄目なのだよ。小さなトヨタの車を運転して市電にぶつかったらどうなるかは目に見えているだろう」
――日本を離れて半年になりました。
「日本は気にしているよ。なぜなら、私は日本で働いていたのだから。ストレスと重圧のために健康を犠牲にした。つまり、自分の健康を日本にささげた。だが、私が倒れたことで日本に罪はない。私は全試合においてストレスやプレッシャーを自分にかけ過ぎた。ジェフ(千葉)の試合においても、代表の試合においても。私は胸にペースメーカーを埋めているが、いつも『これは日本の思い出の品だ』と言っているんだ。もしペースメーカーにメード・イン・ジャパンと書いてあったら最高だがね」
――最近の体調は。
「私は医者じゃない。だが、脳梗塞(こうそく)の後にこれほど回復したのは奇跡だということは知っている。医療実験の動物みたいなものだ。リハビリでも、ああしろ、こうしろと。生き延び、自分の頭で考え、話すことができる。驚くべき成功だよ。
すべては可能だ。唯一不可能なものは『木製の暖炉』だけだ。南アフリカで日本が決勝まで勝ち進んだら、ここグラーツで仲間と一緒に観戦したいものだ」