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6:「1対65」 存在感競う
メキシコ湾に臨む米国フロリダ州のタンパ。 二つの戦争(アフガニスタンとイラク)を指揮する米中央軍司令部がここにある。そのTV会議室で2日、日本の連絡官、柴田有三1等海佐(43)が立って発言した。 「イラクの陸上自衛隊員の数は今月末までに560人。この結果、イラク再建を支援する自衛隊員の総数は1100人に達します」 スクリーンに大映しされた前線司令部(中東・カタール)のスミス副司令官がほほえんだ。「日本の英断に感謝したい」 ◇軍事の「外交」 会議に参加したのは、米中央軍司令部の幕僚と、現在65カ国にのぼる「有志連合」の連絡官。様々な自国の制服に身をつつんだ軍人たちだ。 司令部前の駐車場に、金網で囲まれ、事務室代わりのトレーラーハウス約80台が林立し、各国の旗が翻る一角がある。 連絡官のために作られた「有志連合村」だ。 村は二つある。米中央軍は01年の同時多発テロの後に「不朽の自由作戦」(OEF)村を設けた。その1年半後、対イラク開戦とほぼ同時に「イラクの自由作戦」(OIF)村を隣に作った。 米国は二つの村を厳然と区別する。イラク戦争不支持のフランス、ドイツ、ロシアなどに対しては、OIF村への出入りを禁じている。 戦争や戦後復興の協力を巡ってこうした村が作られるのは初めてだ。 ブッシュ政権になって顕著になった米一極主義の時代――。ワシントンが政治の「外交村」とすれば、タンパは軍事の「外交村」なのだ。 中央軍は毎日、過去24時間の軍事作戦や現地情報を二つの村で解説する。より深い情報は、各国連絡官の腕次第。OIF村に入れない国も、関係国の連絡官をバーに連れ出すなどして取材する。 日本は02年夏から連絡官を派遣している。約半年交代。現在は陸海空自衛隊から計3人。いずれも経験豊かな国際派だ。 柴田はハワイの米太平洋艦隊司令部で3年間、連絡官を務めた。 山田伊智郎1等陸佐(45)は、93年カンボジア、02年東ティモールの国連PKO(平和維持活動)の経験者だ。 尾崎義典2等空佐(38)は、米航空士官学校の教官として2年半、米軍教義を研究した。 柴田は3月上旬に帰国。新しく海自から伊藤弘2佐(38)が来た。彼も米国留学の経験を持つ。 「沈黙は金にならない」が合言葉だ。 「1対1」の日米同盟と違って、有志連合村は「1対65」の世界。米国は日本を特別視しない。 村の公式日程は、中央軍による状況説明、全体会議、分科会など。 そこで質問し、提案し、指導力を発揮する。 例えば、アフガニスタンの武装解除・社会復帰分科会で、山田は毎回現地情勢の調査と状況説明を担っている。 尾崎は今年1月に人道支援分科会の議長に就任、医薬品、学用品、食糧支援をとりまとめた。 柴田はベルギー、ノルウェーなど7カ国と組んで、非公式の情報交換会を作った。これが全体会議の事実上の運営委員会となりつつある。 こうして存在感を示し、中央軍や各国から一目置かれるようにする。それが米軍の動向や復興支援のニーズをいち早く知るための布石なのだ。 ◇消えゆく幻想 多国籍の世界での活動を通じて、自衛官らは一様にこんな印象を抱く。 「日本だけが制約のある国ではない」 尾崎が言う。「ここに来て感じたのは、『普通の国』なんてないということ。それは幻想だ。米国こそが特殊な国。日本は『制約がある』と最初に言うのではなく、自信を持って『これが出来る』と言えばいい」 65分の1の自画像が、旧来の同盟でもたらされた固定観念の呪縛を解き始めている。(敬称略) ◇ 「岐路の最前線」編はこれで終わります。岡野直、田井中雅人、谷田邦一、藤田直央、藤脇正真、本田優、牧野愛博が担当しました。
(朝日新聞2004年3月24日朝刊紙面)
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