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上:説明なき対米傾斜政策亡くなった2人は、バグダッド陥落後の4月、日本政府から真っ先に米復興人道支援室(ORHA)に派遣され、日本の復興支援策の主軸として活躍した。当時、米政府の一機関にすぎなかったORHAへの人員派遣は「占領行政に加担する懸念がある」との批判もあったが、小泉首相が問題ないと決断した。 今年3月のイラク戦争開戦以来、米国を一貫して支持してきた政府は、今後4年間で総額50億ドルの資金と、自衛隊派遣という「カネとヒト」の支援を、「対米支援の両輪」(外務省幹部)として準備してきた。しかし、自衛隊のイラク派遣は、その「大義」をめぐって揺れ続けた。 自民党の安倍晋三幹事長は11月28日、「国際社会の中で我々は責任を果たす。この地域の平和と安定はわが国の国益だ」と講演で強調した。その前日、加藤紘一元幹事長はCS放送で「(イラク戦争で)日本は米国に同調したが、大量破壊兵器はなかった。犠牲者が出た場合、どういう大義で遺族に説明できるか、難しい」と述べた。 ■ ■
首相や与党が恐れてきたのは、自衛官に犠牲者が出た場合の世論の反応だ。来年夏に参院選を控え、「いくら選挙準備をしても、犠牲者が出れば全部吹っ飛んでしまう」と自民党幹部。 首相官邸は、これまでの国連平和維持活動(PKO)による自衛隊派遣で欠かさなかった閣議での「準備指示」を避け、防衛庁に「独自の準備」を求めた。「テロとの戦い」を大義に説く首相や福田官房長官は、いつどんな形で自衛隊を送るつもりなのか。「当事者の我々にさえ、驚くほど何のアナウンスもない」と防衛庁幹部は憤る。 ■ ■
外務省によると、11月21日現在、イラクには米英以外に36カ国が軍隊を派遣しているが、自爆攻撃で19人の死者を出したイタリアを含め、撤退した国はない。 外務省幹部のひとりは「自衛隊に死者を出し、日本が撤退すれば各国の軍隊に与える影響は大きい。米国の懸念もそこにある。何があっても引かない覚悟がなければ、自衛隊の派遣は決断できない」と語る。 ■ ■
93年、カンボジアPKOで文民警察官の高田晴行警部補(当時)が殉職したが、日本は撤退しなかった。当時の宮沢喜一首相は後に「もう2、3人亡くなられたら、政治的に私の立場はもっていたか」と述懐した。文民警察官のPKO派遣はその後、99年の東ティモールPKOまで途絶えた。 カンボジアPKO当時、郵政相だった小泉首相は「PKO協力法の国会審議では、血を流してまで国際貢献しろ、という議論はなかった」と宮沢首相の決断を批判した。その首相が今、正面からの議論を避け続けている。 政府に「安全確保への配慮」を義務づけたイラク復興支援特措法が想定したイラクの現状は、7月の制定当時から大きく変貌(へんぼう)した。その現実に目を向けず、「対米配慮」だけで自衛隊派遣を急ぐなら、今回の悲劇が繰り返されかねない。(佐古浩敏)
(朝日新聞2003年12月01日朝刊紙面)
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