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イラク基本法が8日、曲折を経て制定された。しかし、6月末の主権返還後の受け皿である暫定政権をどう作るかという肝心な点を先送りしたほか、大統領評議会の体制やクルド人優遇策と受け止められる「拒否権条項」など、多数派のイスラム教シーア派には不満がくすぶる。恒久政権ができるまで、新生イラクの道のりは依然波乱含みだ。
○数の論理、封じられ
「移行期のいかなる法も、選挙によって選出された議会の承認を受けなければその正統性はない」「基本法は、国の統一をはかる恒久憲法制定にとって障害となろう」。シーア派の最高権威シスターニ師は、基本法署名式典の直後、ファトワ(宗教見解)を出し、冷や水を浴びせた。
ファトワは、国民による選挙を経ず、米国に任命されたメンバーで構成するイラク統治評議会に対し、その正統性への疑念をあらためて突きつけた。
来年1月末までに実施予定の直接選挙を経て暫定議会が誕生する。それより先に、統治評議会が恒久憲法の骨格にもなる基本法制定に関与することは許されない。そうした主張が根幹にある。
「国の統一」という言葉まで持ち出して「障害」と指摘したのは、少数民族クルド人に認められた権限を指しているとみられる。
基本法は大統領評議会について、大統領1人、副大統領2人で構成するとしている。シーア派議員は、同評議会は5人で構成するべきだと主張していた。同派は人口の約60%を占め、5人制となれば人口比に応じてシーア派から3人を送り込めると計算していた。
しかし、3人制ではシーア派とスンニ派、クルド人にそれぞれ割り振られる公算が大きい。さらに大統領評議会の決定は全会一致が必要とされ、「数の論理」でシーア派が主張を通すことはできない仕組みとなった。
○クルド優遇際立つ
最終的には原案通り認めたものの、「拒否権条項」にも依然、シーア派の不満がくすぶる。
恒久憲法草案は05年10月15日までに実施される予定の国民投票で承認される、と定められた。だが、全18州のうち三つの州で反対票が3分の2を占めれば無効になるという条項が基本法にある。
湾岸戦争後、スレイマニヤ、アルビル、ドホークの北部3州はクルド人が旧フセイン政権の支配を離れ、実質的な自治区を形成してきた。この条項は明確なクルド人優遇措置と、ほかの各派に受け止められている。
基本法はフセイン独裁体制の反省に立ち、三権分立や民主主義、連邦制、多党制を根幹に据え、暫定議会の女性議員の比率目標値を25%とするなど、アラブ世界では「民主化のモデル」にもなりうる内容を盛り込んだ。
だが、多数派のシーア派のほか、旧フセイン政権の中枢を占め、現在は「不遇の時」と受け止めているスンニ派にも不満はくすぶる。統治評議会を通じて米国に押しつけられたものとの認識が広まれば、一気にその権威はうせかねない危うさをはらんでいる。
(03/10 10:45)
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