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疲れ切った表情、乱れた髪、伸ばし放題のあごひげ――。米軍が14日の記者会見で発表したフセイン元大統領の映像は、口を開けて医療チェックを受けるあわれな姿を映し出していた。その落魄(らくはく)ぶりに、戦う指導者の影はなかった。同氏が旧治安情報機関を指揮し、米軍攻撃やテロを激化させてきたという可能性は薄く、拘束されたことで今後、暴力が沈静化するという展望を描くことはできず、治安への強い懸念は残ったままだ。
サンチェス司令官は記者会見で「抵抗はなかった」「一発の発砲もない」と強調した。もし、フセイン氏が対米攻撃を指揮しているならば、包囲して護衛しているはずの武装集団と米軍の間で激しい交戦があるはずだ。
しかし、見つかったフセイン元大統領は、見捨てられた「独裁者」のような有り様だった。側近や武装勢力幹部に指令を出す立場であれば、人一倍服装に気を使ってきたフセイン氏が、あのような無防備な姿をさらすはずがないと思われる。
今年8月以降に激しくなった米軍攻撃や大規模な爆弾テロは、旧政権の治安情報機関の残党がかかわっているとされるが、元大統領とは関係なく、激化してきた可能性が高い。
米軍に対する様々な攻撃が、米軍の占領に対する民衆の反発から生まれた「抵抗運動」であることはかなり明らかになっている。携帯型対戦車ロケット弾で米軍の武装ヘリコプターを撃墜するなどの巧みさから、旧イラク軍の精鋭部隊員らが参加し、「旧政権のため」ではなく、対米抗戦に出ていると見られる。
旧フセイン政権の指導部は、米軍が首都バグダッドを制圧した4月、首都防衛を放棄して姿を隠した。そのころ、バグダッド市内で旧イラク軍の元士官らが「旧政権は民衆を裏切った」「私たちは米軍に敗北したのではない。戦わなかっただけだ」と語るのを聞いた。元大統領の拘束によって、対占領闘争の様相となっている対米攻撃が鈍化すると見るのは楽観的すぎるだろう。
一方で、バグダッドで民間人を巻き添えにする爆弾テロや外交官など文民への攻撃などに、旧政権の治安情報機関や民兵組織サダム殉教者軍団が関与していることも指摘されてきた。フセイン氏との結びつきで語られてきた「フセインのための」権力装置が、今後自分たちの生き残りをかけて破壊工作を続けている可能性が出てきたともいえる。
元大統領の拘束によって、「主のない」闘争となるが、逆に旧政権残党らの破壊工作が露骨な暴力の激化に向かいかねない。
劇的なフセイン氏拘束の発表は、四半世紀にわたってイラク民衆を恐怖で縛り付けてきたフセイン体制が文字通り終わったことを明白な事実として提示した。フセイン氏の個人独裁の過去はもはや戻ることはない。しかし、米英の占領体制が、どのような形で終わるのかはまだ定かではない。
来年6月のイラク人による暫定政権成立までに、米国主導で進む主権移譲プロセスが親米政権の成立で収まるのかどうか。「フセイン後」を巡るイラク国内の熾烈(しれつ)な権力闘争が噴き出す可能性はより強まったといえよう。
(12/15 02:34)
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