全線で運行を再開したJR宝塚線(福知山線)の新ダイヤについて、JR西日本は尼崎―宝塚駅間の直線の最高速度を時速120キロから95キロに、事故が起きたカーブは70キロから60キロに下げるとしている。だが、同社が近畿運輸局に提出した運行計画変更届出書には、同区間の許容速度は「変更なし」となっている。法的な制限速度は120キロのままだ。
14日に発表した最高速度の引き下げは、安全優先への象徴とされた。
再開に向け、事故現場のカーブ手前600メートルの地点に新型の自動列車停止装置(ATS―P)が置かれた。ただし、時速120キロで通過しても安全に減速できる距離という。ある運転士は「120キロに戻す布石だろう。95キロで設計して後からやり直すと二度手間になり、コストもかかる」と見る。
会見でJR西日本の徳岡研三専務は、最高速度引き上げの可能性について「再開後、遺族や利用者にいろんな感想があると思う。来春のダイヤ改定時に改めて検討したい」と答えた。
子会社の社長から7年ぶりに復帰し、23日付で安全性向上担当副社長に就任する山崎正夫氏(62)は事故の背景に組織の風通しの悪さがあったと反省する。「現場に遠い社員は、安全は無料だと思ってしまったのではないか」
以前から現場では改善を求める声が出ていたのにもかかわらず、いまだ対策が講じられていない問題点は数多い。
夜間などの線路点検に使われる保守車両は、鉄道信号に反応しないため、手信号で往来する列車に自分の位置を伝えている。車掌と運転士と運転指令が連絡に使う列車無線が一部のエリアで聞こえにくくなる……。
社内の鉄道本部は数年前から、宝塚線へのATS―P設置を求めてきた。しかし、他の投資を優先する総合企画本部の判断で、後回しにされた。ある鉄道専門家は「他のJRグループと比較しても、技術者軽視を感じる」と話した。