JR宝塚線(福知山線)の脱線事故をめぐり、JR西日本が社員に事故について伝える事故当日のメール連絡に、多くの犠牲者を出した事実が触れられていなかったことがわかった。また、事故電車に乗り合わせた運転士2人が救助活動をせずに出勤、事故の3時間後に社員43人がボウリング大会を開いていた問題が発覚したが、同社は6日、事故が起きて以降、複数の職場でゴルフコンペや宴会など「不適切な事象」(同社)があったことを明らかにした。同社の危機意識の薄さが次々に浮き彫りになっている。
JR西日本はホームページ上に掲示した列車の運行情報を社員にメールで知らせている。今回の事故当日の4月25日にも配信されたが、「死者」「横転」など重大性を認識させる内容になっていなかった。
また、同社大阪支社は脱線事故直後の午前9時半、多数の死傷者が出た場合に事前に定めた社員を全員招集する最高レベル「第1種A体制」を発動させた。しかし、この情報は本社に伝えられなかった。本社はテレビ映像や脱線車両に乗り合わせた関連会社員からの電話連絡で「重大事故」と判断。大阪支社とは別に午前9時45分に「A体制」を組んだ。
本社も大阪支社も館内放送で社屋内にいた社員に「A体制」を知らせたが、出先機関には社員を派遣することになっていた部署だけに電話で伝えた。
正午ごろ、派遣対象外で「A体制」発動を伝えられていなかった天王寺車掌区の古川宏二区長(53)らはボウリング場に向かっていた。約1時間後、当直係長が、区長の携帯電話に2回にわたって電話をかけた。しかし、ボウリングに興じていた古川区長は上着のポケットに入れた携帯電話が鳴っているのに気づかなかったという。
「社全体の問題だととらえていただき、見直しをしてもらいたい」。6日、国土交通省近畿運輸局で開かれた福知山線事故対策会議などに出席した北側国交相は、JR西日本に企業体質を改善するよう改めて注文をつけた。
社員の間からは、不適切な行動は、社内の連絡体制などの不備だけによるものではないという声も上がる。
事故現場から運転士が立ち去ったことについて、運転士出身の本社若手社員は「運転士は、秒単位で定刻ダイヤを厳守するよう厳しく指導され、ミスすると日勤教育やボーナスカットが待ち受ける。脱線した瞬間、乗っていた運転士2人は一時的に乗客救助という大事なことが、思考停止したのではないか」。
一方、天王寺車掌区のボウリング大会開催問題で、ある中堅社員は「民営化したとはいえ、上司の間では職場の階級意識が強かった旧国鉄の悪弊をいまもひきずっている。若手社員は内心では『まずい』と感じていても、言い出せなかったのでは」と推測した。
同車掌区を管轄する同社大阪支社の社員は「仮にボウリング大会の途中から職場に戻っていたとしても、すでに現地に動員できる職場からは社員を派遣していた。あの時間では、手伝うことはなかっただろう」と話した。