兵庫県尼崎市のJR宝塚線(福知山線)で脱線した快速電車の高見隆二郎運転士(23)=死亡=が今年1月、友人らに「遅れを取り戻すことができる力量を持った運転士ほど社内で高く認められる」と話していたことが11日わかった。「カーブに入る際、ブレーキをかける位置をできるだけ遅らせる」と、職場で「回復運転」と呼ばれる手法についても具体的に語っていたという。
国土交通省航空・鉄道事故調査委員会などの調べで、快速電車は時速120キロ制限の直線区間を123キロで走行し、十分減速しないままカーブに接近。続けざまに2度ブレーキをかけ、約50メートルの片輪走行後に脱線、横転したとされる。当時の高見運転士の行動や心理を解き明かす証言になりそうだ。
高見運転士と小学校時代から親友という会社員(23)が朝日新聞記者に語った。
それによると、高見運転士は今年1月、中学時代の同級生が集まった飲み会で、「電車の出発が遅れたり、お客さんの乗り降りが長引いたりしたとき、(運転時間を)詰められるところで詰めなければならない。社内で『回復運転』と呼ばれ、結構難しい」と話題にしたという。
具体的には(1)直線区間でスピードを上げる時間を延ばす(2)カーブ手前の減速ポイントでブレーキをかける位置を遅らせると説明。これらの方法は「社内の運転マニュアルではなく、見習い時代に先輩から教わったり、職場で同僚からコツを聞いたりして覚えた」と語った。
高見運転士は昨年6月、JR学研都市線で約100メートルオーバーランし、訓告処分を受けた。その直後に会った際は落ち込んだ様子で、「偉い人の前で反省文や報告書を何度も書き直しさせられたり、本を全部写さなければならなかったりとても大変だ」と、社内で「日勤教育」とされる再教育の厳しさを打ち明けたという。
数週間後に再会したときは、「今回は何とか運転士をやめなくて済んだけど、今度やったら(乗務を)おろされるかもしれない。会社はミスに厳しく、運転士から車掌に戻る人も少なくない」と不安を漏らした。