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大破した列車から救出される乗客=25日午前10時12分、兵庫県尼崎市久々知で |
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脱線事故で負傷、線路脇に運び出された負傷者=25日午前9時51分、兵庫県尼崎市で |
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脱線した列車から運び出され、近くのマンションの空き地に運ばれる負傷した乗客たち=25日午前9時50分、兵庫県尼崎市で |
その瞬間、乗客が一斉に宙に浮き、前に飛んでいった――。25日朝、兵庫県尼崎市のJR宝塚線で起きた快速電車の脱線事故は数百人の乗客が死傷する大惨事になった。横倒しになって線路わきのマンションに突っ込み、折れ曲がった車両の中から、血まみれの乗客が次々に助け出された。事故を起こした電車は、手前の停車駅をオーバーランするトラブルがあった。何が事故を引き起こしたのか。兵庫県警と国土交通省は対策本部を設置し、同省は調査官を現地に派遣した。
《衝撃》
「ガガガ」
異様な音と振動。次の瞬間、車内はものすごいごう音と絶叫に包まれた。乗客は次々と前に飛ばされていった。
「かなりスピードが出ていた。窓ガラスが割れ、体が回転し、何が起こったのかさっぱりわからなかった」
1両目と2両目のつなぎ目に乗っていた神戸市北区の訪問販売業森田三奈子さん(52)は、左足を引きずりながら話した。
乗客らによると、電車は伊丹駅でオーバーランし、同駅を少し遅れて出発した。車内で「遅れてすいません」とアナウンスがあったという。
後ろから2両目の座席に座っていた兵庫県西宮市の男性会社員(30)は、電車がスピードを上げて遅れを取り戻しているように思えた。その瞬間、目の前に立っていた人が一斉に宙に浮いた。
「猛スピードを出していると感じた瞬間、ダダーンと音がして、床に投げ出された」と同県宝塚市の主婦(59)は話した。
同県伊丹市のパート森友子さん(39)は、つり革を持っていた手が離れ、前方に体が投げ出された。「顔を上げると、頭から血を流した人がたくさんいた」
3両目に乗っていた同市の大学1年生の女性(18)は「ドンという音がして左に揺れた後、逆に右に揺れて止まった。車両の床に亀裂が入っていた」と青ざめて話した。
通勤途中だった会社員の三国谷勝寛さん(55)によると、ラッシュをすぎていたものの座席は埋まり、乗っていた4両目は立っている人もいた。電車は「ガガガッ」と大きな音を出し、速度が急に落ちた。
扉がすぐに開いたため外に出ると、線路沿いのマンションに衝突した車両が「く」の字に曲がっていた。別の車両は右側の電柱に接触してとまっていた。
横転した車両付近では「助けて」と車内から助けを求める声や泣き声が聞こえた。
《脱出》
乗客は、事故で壊れたドアや窓から必死ではい出した。
1両目で立っていた西宮市の女子大生(21)は、一緒にいた友人の女性と「電車急いでいるねえ」と話した直後、電車が左に傾き、衝撃が走った。割れた窓から自力で脱出した。血まみれで担架で運び出された友人に駆け寄り、「生きてた。良かった」と話した。
同じく先頭車両にいた女子学生(18)は、気がついた時には外に投げ出されていた。「見渡すとマンションの地下部分のようだった。周りには大勢倒れていた。つぶれたフェンスが上からぶら下がっていたので、それにつかまって外にはい上がった」
7両目に乗っていた同県三田市の男性会社員(48)は、ドアが開かなかったため、後部の車掌室から脱出した。「事故現場手前に緩やかな右カーブがある。いつもなら減速するが、今日はしなかった」と話した。
6両目に乗って通勤中だった伊丹市の女性(49)はしりもちをつき、床を4、5メートル滑った。車両の前方に、10人くらいが団子のように固まっていた。立ち上がり、壊れて半開きになっているドアから出た。
前から3両目に乗っていた神戸市の男子大学生(19)は「顔を上げると、2両目との連結部分がちぎれてなくなっていた。そこから脱出した」と言った。
同県川西市の女性会社員(45)は、気がつくと体の上に何人も折り重なっていた。乗客らは「順番に立ち上がれば大丈夫」と声を掛け合った。ドアが閉まっていたので、数人の男性が手を貸しあってこじ開けた。
《救助》
現場は救急車のサイレンと、「現場から離れて下さい」と叫ぶ警察官の怒号などが入り交じり、騒然とした。近くの住民数百人が周囲を取り囲んだ。
1、2両目の車両は、進行方向に向かって左側の9階建てマンションの壁面にめり込むようにぶつかり、くちゃくちゃに大破している。後続の車両が折り重なるように脱線して止まっていた。
車両の上に十数人の消防隊員が駆け上り、大破した車両の中をのぞき込んだり、窓から手や上半身をつっこんだりして、必死の救助作業を続けた。
大破した車両付近から別の十数人の消防隊員が次々と乗客を担架に乗せて、線路わきの道路に敷かれたブルーシートの上に運んだ。
シートには、ところどころに血がついている。顔や服が血まみれになっている人が多数おり、近くの住民が治療のためのタオルや氷を自宅から運んだ。運ばれた人たちは毛布にくるまれたまま、寝かされ身動きしない。両手を上げたまま動かない男性もいた。頭から布をかぶせられた人もいた。
現場近くには「救護所」と書かれたオレンジ色のテントが設けられた。その中で、救急隊員が運び込まれた乗客に点滴を打ったり、励ますように耳元で話しかけたりしていた。
近所の多くの人が救助に協力しようと駆けつけた。現場近くの金属加工会社で作業をしていた安福和美さん(43)は、事故直後から仲間と線路のフェンスを乗り越え、救助にあたった。会社から工具を持ち出し、フェンスを切り取るなどして避難路を確保した。「電車から降りてくる人は、みんな頭や肩から血を流していた。まるで地獄だ」と話した。