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地方議員、監視役へ始動 夕張破綻の教訓、パイプ役じゃダメ2007年03月08日16時37分 決算書も読めない議員はもういらない――。北海道夕張市の財政破綻(はたん)は、住民の要望を伝え役所の仕事を承認するのが主だった地方議員に、変化を迫っている。自分のまちの財政難を知り立候補を決意した人、自治体会計の講座で学ぶ地方議員たち。来る統一地方選でも、財政危機に陥った自治体では再建策などが争点になるとみられる。夕張ショックは、「パイプ役」から「チェック役」へと、地方議員像を変えるきっかけになるのか。
●決算の見方講座人気 「まず、財政規模を見てください。人口が1万数千人の市で193億円は異常。普通は80億円程度でしょう」 1月下旬、東京都国分寺市で2日にわたって開かれた「自治体財政分析講座」。40人の参加者たちがメモをとりながら聴き入っていた。ほとんどは地方議員だ。 講師役の大和田一紘・多摩住民自治研究所副理事長が、夕張市の「決算カード」を教材に解説を続けた。「歳入で中身が分からない『諸収入』が52%も占める一方、歳出は『投資・出資金・貸付金』が48%。毎年、第三セクターなどにお金を貸し付け、返済金を歳入にあてる自転車操業ですよ」。注目ポイントが次々と披露された。 決算カードは自治体ごとの決算統計を簡便にまとめたもので、01年度分からは総務省のホームページでも全市町村分を閲覧できる。講座参加者たちは、自らの自治体のカードを20年分持参、分析手法を学んだ。 「財政は本を読んでもなかなか分からない。講座を聞いて断片的に頭に入っていた知識がつながった」と宮城県七ケ浜町議の遠藤久和さん(47)は話す。自治体の財政力に陰りが見える今、「何が必要で何が不要かの峻別(しゅんべつ)作業を、議員と町の執行部が話し合う時代だ」と感じている。 「もはや対岸の火事ではない。夕張の住民には申し訳ないが、よい教訓になった」。講座参加者の一人、茨城県取手市議の朝比奈通子さん(53)は言う。大手企業の工場が複数立地する同市の財政は余裕があるが、「市場経済と連動している税収に依存するのはこわい」。 講義した大和田さんは環境運動などに携わるうち「財政問題の理解が不可欠」との思いを強め、勉強会を始めた。市民向けが多かったが、夕張問題以降は議員からの依頼が増えているという。
●「会計は町まかせ」脱皮 「財政に強い議会」作りをいち早く進めてきた町がある。夕張市の西隣の北海道栗山町。人口約1万4千人で農業が基幹産業だ。地方債残高は160億円。高齢化率も29・65%と高い。 2月22日、町議会で開かれた今年度7回目の「中長期財政問題等調査特別委員会」。町が示した財政赤字解消策について「人件費への切り込みが甘い」と、助役が質問攻勢にあっていた。 町議会は01年から、議会独自の情報公開や町民への報告会を開くなどの議会改革・活性化策に次々と取り組んだ。昨年は全国で初めて議会基本条例を制定。中長期財政特別委ができたのは、02年だ。 全国どこの議会でも予算に関する特別委が設けられるが、出てくるのは単年度予算。「議員は町が将来どうなるか分からないし、町執行部もそこに触れられたくない雰囲気があった。それではだめだ、執行部は資料を全部出せ、議員は勉強しろ、で始まった」。橋場利勝議長(61)が振り返る。 町は2015年に町財政がどうなっているかのシミュレーションを議会に提示。当初推計で74億円だった赤字は、今年1月に推計をやり直したら104億円にふくらんでいた。町は職員数や給与の削減などを打ち出したが、議会は近く「さらに事務事業を見直せ」と迫ることにしている。 夕張市では、市側が複雑な会計操作をした事情はあったが、膨らむ一方だった赤字を議会が見抜けなかった。橋場さんは「議員が財政に強くなると、議会の監視力が高まる。カネがないと分かっていれば『あれやれ、これ作れ』なんて言う議員はいなくなる」と話す。
●自治体間競争も背景 地方議会が変革を迫られる背景には、小泉前政権が進めてきた地方財政改革がある。地方交付税の削減や補助金廃止で地域格差は開きつつある。生き残りをかけた自治体間競争のためにも、議員の立場から自治体の情報公開と行財政改革を迫り、監視しようとする動きが生まれてきたのだ。 昨年11月に出た「自治体連続破綻の時代」(洋泉社)の著者松本武洋さん(37)は、埼玉県和光市議。03年の初当選の前は経済専門出版社の編集者で、企業会計の知識が自治体会計を分析する下敷きになった。同じ会派の議員と、独自の起債制限方法や外郭団体なども含めた貸借対照表やコスト計算書の開示などを提案してきた。 本の書き出しは厳しい。「今時の地方議員たるもの、財政について調査し、行政の言いなりにならずに内容を分析できなければ無価値だ。役に立たない人物は次の選挙で即刻取り換えなければならない」 今年1月には、「市民への情報公開などまず議会改革を」と訴える市民組織「自治体議会改革フォーラム」が発足。宮崎県日向市議の岩切裕さん(57)は「財政などを議論しようにも、市議会で自由な討論ができていない」と賛同者に名を連ねた。「事業評価制度や入札改革を訴え、行財政改革を進めたい」と話す。 関西でも2月、地方議員志望者らの「大阪再生ネットワーク」が誕生した。大阪市の職員厚遇、大阪府の裏金問題などを機に、もう役所には任せておけないと考えた人たちだ。大阪府枚方市議選に立候補を予定している元大阪府職員の土岐泉さん(58)は「これまでの議員は『口きき』などで一部の利益しか代表していなかった。これを変えたい」と意気込む。 市長が昨年暮れ「財政危機」を宣言した静岡県熱海市には、この宣言がきっかけで市議選立候補を決意した人がいる。本職が津軽三味線演奏家の小森高正さん(41)。「借金が372億円と知り、このままでは熱海は衰退すると思った。財政を立て直し、活気を取り戻したい」と話す。
◆課題読み解く能力不可欠に 「自治体議会改革フォーラム」呼びかけ人代表の広瀬克哉・法政大学教授(行政学)の話 これまでの地方議員は行政に住民の要望を伝え、政策に反映できれば「手柄」になった。が、平成の大合併、三位一体改革など、自治体を巡る状況が大きく変わったいま、自分で課題を読み解く能力が不可欠だ。財政をはじめ、政策の評価や解説ができない議員は今後、退場を余儀なくされるだろう。すでに危機意識を持った財政基盤の弱い自治体議会などで模索が始まっている。
◆キーワード <実質公債費比率> 自治体の収入額に対する借金返済額の割合を示す指標。地方債の発行方法が、06年度から国の許可制から協議制に変わったのに伴って導入。交通、水道など公営企業会計への繰り出し金といった、これまでは「借金」と見なされなかった部分も含んでいるのが特徴。数値が高いほど、その自治体が資金繰りに苦しんでいることを意味する。18%以上の自治体は国や都道府県の許可がないと地方債を発行できない。25%以上は一般事業、35%以上は公共事業などでも地方債発行が制限される。
■実質公債費比率の高い市町村 カッコ内数字は順位。*は4月の統一地方選で首長選か議員選がある市町村 (1)北海道歌志内市* 40.6% (2)北海道上砂川町 36.0 (3)長野県王滝村 33.3 (4)沖縄県座間味村 30.6 (5)福島県泉崎村 30.1 (6)山形県新庄市* 29.9 (7)兵庫県香美町 28.8 (8)北海道夕張市* 28.6 (9)北海道洞爺湖町* 28.2 (9)長野県泰阜村* 28.2 (11)北海道浜頓別町* 27.7 (11)山形県長井市* 27.7 (13)福島県双葉町* 27.3 (14)沖縄県伊平屋村 27.2 (15)北海道知内町 27.1 (総務省「2005年度地方公共団体の主要財政指標一覧」から) PR情報
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