八代英太・元郵政相(68)の立候補で、自民・公明の選挙協力にヒビが入った東京12区。自民党は他の選挙区への影響を食い止めようと、公明前職・太田昭宏氏(59)支援の姿勢を懸命にアピールする。公明党も「プリンス」と呼ばれる同氏のため、全国の組織力を集中させつつ、小泉人気を利用する。選挙戦の行方をにらんで、それぞれの動きが急だ。
●自民―都連挙げて太田氏支援
「この12区で、改革の象徴、連立政権の象徴の太田さんが負けると困るんです」
自民党の安倍晋三幹事長代理が1日、太田氏と共にJR赤羽駅前に立った。
前日は武部勤幹事長が「守ってください、勝たせてください」と絶叫。3日は竹中郵政民営化担当相が入り、4日は小泉首相がマイクを握る。
前回は自民公認の八代氏が比例、太田氏が選挙区でともに当選。「自公協力」の象徴と言われた。今回、郵政民営化法案に反対した八代氏は自民党の公認が得られず、無所属で立候補した。
8月29日、八代氏の立候補表明から3時間後。太田氏の陣営幹部に電話が入った。自民党の与謝野馨政調会長だった。
「明日の公示日、太田氏の地元で支持者回りをします」
午前11時からの自分の出陣式より先に、太田氏の第一声にかけつけた。
自民党東京都連は八代氏の立候補が決まった直後、全都態勢で太田氏を支援する「特別選対本部」を設置。自民党を支持する業界団体を紹介するはがきも、都連が千枚引き受けた。
都連幹部によると、他の選挙区で自公共催の集会が流れるケースも出ている。「影響を食い止めなければいけない」
太田氏の陣営には、都内の自民党候補の陣営から続々と「名簿」が届いている。12区内の支援企業や関係者が記されている。
「票に直接つながる中身の濃い名簿。忠誠心の証明だ」と太田氏の陣営幹部は評価した。
「私でよければ応援に行きます。街頭にも立ちます」。そんな電話も、自民党候補から寄せられている。
●公明―「小泉人気」も利用
公明党は組織をあげての戦いを進める。
「21区は涙をのんで、12区の応援に来ました」
太田氏の選挙事務所を訪れた東京都立川市の自営業の夫妻は、受付の寄せ書きにこう書いた。
公明党は東京21区で候補者を出す予定だったが、「突然の解散で時間が足りない」との理由で比例に回り、太田氏が都内の小選挙区で、唯一の候補となった。
公明党の選挙には「F(フレンド)作戦」という言葉がある。支持母体の創価学会員が友人や同級生にお願いに行くことだ。夫妻はこの日、会ったことのない同業者ら4軒を回った。「3軒は色よい返事がもらえた。疲れたけど充実感がある」
JR王子駅前にある学会員経営の居酒屋には、青森、埼玉、大阪など全国各地の学会員が道を聞きに訪ねてくる。
一方、太田氏の陣営は今回、公明色をあからさまにせず、「小泉人気」の流れに乗る戦略をとっている。
掲示場用ポスターは「連立与党統一候補者 自民党・公明党」。小泉首相、安倍幹事長代理と3人で握手したポスターもある。
陣営幹部は言う。「今回は小泉さんが来てくれればいい。このムードは変わらない」
●八代氏「厳しい戦い」
八代氏は3日、北区の商店街で「厳しい選挙だが、この選挙区では日本の政党政治のあり方が問われている」と訴えた。
東京12区はほかに、2人が立候補している。
この日、共産新顔の野々山研氏(42)は団地をこまめに回り、「国民いじめの構造改革にノーの審判を」と呼びかけた。民主前職の藤田幸久氏(55)はJR王子駅前で「政党間の取引で有権者を無視している」と八代氏をめぐる自民、公明の動きを批判した。