小沢一郎氏が表に出始めた。
「小泉首相のパフォーマンスには、正々堂々、簡潔にメッセージを送ることが一番の対抗策だ」
23日、TBSの番組でそう語った。22日夜に続く連日のテレビ出演。週刊誌やスポーツ紙の取材にも積極的に応じている。
民主党幹部には、かねてこう告げていた。
「一仕事終わったら、テレビに出る」
側近の一人は「それまでは新党のことしか頭になかった」と語る。
○新党接触「退路断たせる」
「政権をとるためには、新党との連携も考えるべきだ」。11日、有力な支援者である稲盛和夫・京セラ名誉会長を囲んだ党幹部の会合で、小沢氏は言った。郵政民営化法案に反対した自民党の前職らが新党をつくるらしい――。そんな情報が永田町を駆け巡っていた頃だ。
小沢氏の発言に、岡田代表の顔がこわばった。岡田氏の持論は「民主党の単独政権」だからだ。小沢氏は構わずたたみかける。「造反組が自民党に戻らないよう、退路を断たせるべきだ。私は出来ることをやる」
稲盛氏も「けんか上手の小泉さんに岡田代表一人では勝てない。オール民主党で戦うべきだ」。岡田氏は「おっしゃることは分かっています」と言うほかなかった。
小沢氏は東京都内のホテルにこもった。後に国民新党を結成する綿貫民輔元衆院議長には、頻繁に接触。「決断するなら早い方がいい」と促し、迷いが見えると「作らなければだめだ」。その綿貫氏から結党の知らせを受け、小沢氏は言った。
「よし、分かった」
○「執行部任せできぬ」
国民新党には民主党から田村秀昭参院議員が加わった。田村氏から電話で知らせを受けた小沢氏は、こう言って送り出した。
「記者会見では『民主党とのパイプ役になる』くらいは言ってくれ」
小沢氏の期待通りに進まない話もある。
17日夜。小沢氏は田中康夫長野県知事と都内で会った。前回総選挙では民主党のマニフェストをともに作った間柄だ。
田中氏は、国民新党に加わった亀井静香元自民党政調会長や、新党日本に参加することになる小林興起前衆院議員、荒井広幸参院議員に会ったことを告げて相談した。
田中氏 どうすべきか、考えています。
小沢氏 知事を辞めて国民新党の党首になったらいい。綿貫さんが代表になったが、とりあえず副代表にでもなればいい。後で交代するよう話をつける。
だが、田中氏は小沢氏の構想に乗らなかった。国民新党には加わらず、新党日本の代表に就任した田中氏は21日の結党会見でこう言った。「小沢一郎さんは私が尊敬する政治家である。その心は変わっていない」
この間、首相の反対派つぶしの派手な言動と新党騒動で、民主党の見せ場は乏しくなっていた。22日、小沢氏の手元に届いた党の独自調査の結果は、焦点の選挙区で軒並み自民党候補を下回り、過半数獲得どころではないという劣勢だった。
「ひどいな」。小沢氏はうなった。そして自らメディアに出始める。
24日には菅直人前代表や鳩山由紀夫元代表と会う。岡田氏を支えることで一致し、頻繁に会合を重ねる3氏は、もう一つの思いも共有する。
「執行部任せではとても勝てない」