「障害者は税金で『飼っている』という感覚が、国民の中にあるのではないか」
富士吉田市の宮下大司さん(59)は35歳のとき、事故で視力を失った。盲学校に通い、はり・きゅう・マッサージ師の資格を取り、生まれ育ったこの土地で治療院を営んでいる。
食べていくのがやっとの生活だが、たまには焼き鳥などを食べに行く。「おれたちの税金で食っているくせに、こんなところに来るな」。酔客に怒鳴られたことは一度や二度ではないという。
「『障害者はこの金で生活しろ』という福祉はやめてもらいたい。与える福祉では障害者がプライドを持てない。自分で稼げるように、教育施設などを拡充してほしい」
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郵政国会の陰で、障害者自立支援法案が廃案になった。生活に困窮していても財産があっても一律に負担を求めるこの法案には反対だったという。財産も収入もある障害者には多くの負担を求めるべきだと思う。「本当の意味で自立を支援する法律にしてほしい」
選挙戦が始まり、街頭で各候補者の演説を聴いた。「社会福祉を充実させます」。長い演説の中、一言付け加えるだけで、何をどうしてくれるのかわからなかった。
街中をつえ一本で歩けるようにならないものかと考える。住んでいる街は音声信号が少なく、バリアフリーもところどころ。「人の手を借りないと自分の体を移動できない」。外に出られないため、ルームランナーで運動していると笑う。
夢は、子どもの頃に歩いた道を自分の足で踏みしめ、確かめること。「昔の町の姿はしっかりと覚えている。どう変わったか、一人で歩いて確かめられたらいいねえ」。治療院で熱いお茶をすすりながら、遠くを見つめるように言った。
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「福祉がかすんでいる」。体幹機能や呼吸器に障害がある増穂町の竹内正直さん(74)は、テレビの政見放送を見て、そう感じる。各候補者が訴える「福祉の充実」は白々しく思えた。「命と向き合っているのか。本当に障害者と向き合ってもらえるのか」。疑念が頭の中を巡った。
県障害者福祉協会理事長などいくつもの福祉団体の要職を務め、福祉充実に尽力してきた。昔と比べると法律や制度が整備され、障害者が社会参加できるようになってきたと思う。だが、「障害者一人ひとりで考えると、どの制度も使い勝手がいいとはいえない」。
障害者自立支援法案も「手直しが必要」と様々な場で訴えた。「自立支援という狙いはいいが、中身は問題が多い」。切実な現場の声は国会には届かなかった。
だが、郵政民営化法案の否決で期せずして廃案になった。法案を練り直すよう再度、訴えるつもりという。
「思いを代弁してくれそうな候補者はいない。だからといって政治に背を向けるわけにはいかない」。耳を傾けてくれるかもしれないというわずかな可能性を見いだし、一票を投じるつもりだ。
■障害者自立支援法案■ 身体、知的、精神の各障害者への福祉サービスを一元化した法案。年間数百億円の予算不足が続く現行の支援費制度を改め、福祉サービスの利用者負担を所得に応じた「応能負担」から、原則1割の定率負担とした。一方で、国の財政的な責任をはっきりさせ、増え続ける在宅サービス利用に対する支出を義務化した。衆院を通過、参院で審議が続いていたが、衆院解散に伴い廃案になった。厚生労働省は、次期国会に再提案する方針を示している。