「はじめに行革ありきで、子どものことを考えていないのでは」
長崎市議会の厚生委員会で3月、市郊外の福田地区の住民が議員たちに訴えた。市議会には、地元の市立保育所を民営化する条例改正案が提出され、住民らは市立としての存続を陳情していた。
市立保育所の民営化は01年3月に市が策定した「行政改革大綱」にさかのぼる。市職員を300人削減し、05年度までの5年間に約77億円の歳出減を図る計画だ。12カ所の市立保育所のうち福田と茂木の2カ所の民営化で、人件費など年間約1億4千万円が削減できると市は試算した。
住民の反対に、議員の反応は冷ややかだった。「全国でもどんどん民営化されている。時代の流れだ」。条例改正案は可決された。
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小泉首相は就任直後の01年5月、保育所の受け入れ枠を3年間で15万人増やす「待機児童ゼロ作戦」を打ち出した。柱は保育所の運営に企業の参入を認める規制緩和。非常勤職員を増やすことも認めた。
一方で、04年度からは公立保育所への運営費補助を廃止するなど、国や地方の支出削減も加速させている。
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漁師やビワ農家が集まる長崎市郊外の茂木地区。橘湾を望む茂木保育園には0〜5歳の約140人が通う。
2年前には、商店街のあちこちに「民営化反対」を唱えるビラがあふれ、10万人を超す署名が集まった。だが、市は04年10月、学校法人鶴鳴学園が母体の社会福祉法人に経営を委譲した。
民営化後、保育所は保護者の不安に配慮して、プログラムをほとんど変えなかった。一方で午後6時以降の延長保育や病後児保育など、市立時代には難しかったサービスを始めた。
原田雄司・学校法人本部長は「保育所経営で利潤は望めない。地域に根ざし、理念を持ったところでないと無理だ」と強調した。
それでも住民の不安は根強い。「長崎の保育を充実する会」代表の池山道夫さん(64)は「小学校からは公が担うのに、重要な乳幼児期は民間任せでいいのか。経営効率重視の法人に渡ったら、保育の質が下がる可能性もある」。
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長崎市は今年1月、周辺の6町を合併し、人口が約42万人から約45万人に増えた。
しかし、合併前の04年度、1市6町で総計約2131億円だった一般会計予算は、合併後の05年度には2002億円と減少した。地方交付税は合算で396億円から384億円に。小泉内閣が進める「三位一体の改革」が、市の財政運営に重くのしかかる。
市は現在、01年大綱に続く新たな行革大綱づくりを進めている。合併で5カ所増えた市立保育所の民営化も検討課題だ。市保育課の浜崎雅訓課長は話す。「民ができるものを、あえて公でする必要はない」