卓球女子の福原愛(19)が練習で初めて中国に渡ったのが7歳。技術を教わったのも中国から日本に来た2人の個人コーチからだ。21日の女子シングルス4回戦で、開会式で選手宣誓もした世界ランク1位の26歳中国人選手と対戦。敗れたものの女王から1ゲームをとる健闘を見せた戦いは、支えてくれた2人への恩返しでもあった。
試合後の福原はさばさばした表情だった。「いっぱい何かをつかみました。この五輪ですべてを出し切りました」。支えてもらった人に対しては「まずは、ありがとうと言いたい。ここまで来られたのはみなさんのおかげです」と語った。
父武彦さんは2人のコーチを「長女と次女みたい」と言う。「長女」が山西省出身の高林慧(けい)さん(41)で、「次女」が遼寧省出身の湯媛媛(タン・ユワンユワン)さん(25)だ。この日も観客席から声援を送った2人。その役割は対照的だ。
元中国代表選手の高林さんは88年に来日し、約15年前に日本国籍を取った。福原には厳しく接する役だ。04年冬の遼寧省での合宿で、福原は単純ミスを繰り返した。そのたびに周囲にミスの原因を教えて欲しいというようなそぶりをみせたため、「自分で考えなさい」としかった。
「言うべきことはしっかり言っておかないと、試合の厳しい場面で力を発揮できない」と高林さん。福原もその考えを理解している。
用具や技術、練習方法で迷って熟考しても判断出来ないとき、相談する相手で、2月に強い球を打てないと悩んだ時も、高林さんに「教えてほしい」と電話した。それから短期間で、一対一の指導でフォームの改造につなげた。
一方、湯さんは癒やし系だ。福原は試合中、よく観客席に目をやる。その視線の先にいる。「落ち着いて、落ち着いて」。身ぶり手ぶりや表情で助けてくれる。
福原が練習拠点にしていた瀋陽で、99年に初めて会った。同省選抜チームの一員だった湯さんは練習場で福原と球を打ち合った。「長い時間、手を抜かない。世界王者たちと同じ。『この子は伸びるな』と思った」と湯さん。武彦さんに見込まれ、専属コーチとして02年に来日した。
2人は着る服を一緒に選ぶ。試合相手の研究のために冗談を言い合いながらビデオを見る。福原にとってリラックスできる相手だ。
高林さんは「よくがんばった。相手が巨大すぎた」。湯さんは「これからも一緒にがんばろう。そう思わせてくれた試合だった」と福原をねぎらった。2人のコーチと福原の挑戦はまだまだ続く。(岡田健)