20日のシンクロナイズド・スイミングデュエットのフリールーティン(FR)決勝で、銅メダルをとった日本ペアの前の監督は井村雅代さん(58)。今は4位だった中国のヘッドコーチだ。ベテラン指導者をはさんだ日本と中国の選手たちは、その教えを胸に、より高いレベルを目指すよきライバルになっていた。
笑い、泣き、抱き合った。表彰台では、ちぎれんばかりに両手を振った。日本の鈴木絵美子(26)と原田早穂(25)は喜びを全身で表現した。鈴木は「日本の7大会連続メダルを死守できて本当にうれしい」。解放感にあふれた表情だった。
04年アテネ五輪にも出た2人は、中国のヘッドコーチ井村さんの指導も受けた。日本代表監督として厳しく鍛えられ、世界と戦う土台を作ってもらった。
06年12月、アジア大会で中国に敗れた直後に、井村さんの中国のヘッドコーチ就任が決まった。2人にとって衝撃だった。そこから中国が急速に力をつけ、強力なライバルとなっていった。
井村さんに世話になったという思いはある。しかし中国に勝たないと、84年ロサンゼルス大会から続く全種目のメダル獲得記録が途切れる。2人は、勝つために、中国に井村さんがいることを考えないようにしてきた。
それよりも「一生懸命やるだけではダメ。限界に挑戦する」(原田)とメダル獲得を第一に、自ら厳しい練習を強いてきた。1日10時間を超える水中練習に加え、残り3カ月を切ってからも背筋、腹筋の強化を中心にすえた。
銅メダルが決まった直後の記者会見で、井村さんの率いる中国ペアへの印象を尋ねた中国人記者に、原田は答えた。
「元々長く、しなやかな脚をもつ中国の2人に対し、努力に努力を重ねた」
井村さんについては口にしなかった。
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「いい演技やったけど、最後がちょっと違ったな」。井村さんは、演技を終えた蒋文文、蒋テイテイ(テイは女へんに亭)の双子コンビを力いっぱい抱きしめた。「目標に届かず、悔しかったんやと思う」と2人を気遣った。
「世界で一番練習が厳しい」。2人は井村さんの印象について即答した。少しでもうまくできない動作があれば、できるまで徹底的にやらされた。丸一日、同じ足首の練習をしたことがある。
四川省出身の2人は、好物の辛い四川料理ばかり食べていた。井村さんにまず改められたのが食生活。「筋肉を付けて強くなるものを食べなあかん」。五輪が終わるまで四川料理を禁じられ、肉、乳製品、野菜、そして甘い物中心のメニューに変えられた。
練習が終わると、「母のようにやさしく面倒をみてくれる人」(文文)になる。18日のテクニカルルーティンで文文がミスをして落ち込んでいると、冗談ばかり言って和ませてくれた。
「毎日、体当たりで指導してくれたコーチに心からありがとうと言いたい」。2人は競技後、あふれる涙を抑えながら言葉を絞り出した。(岡田健、峯村健司)