張芸謀氏
北京五輪の開閉会式の総監督を務める中国の映画監督、張芸謀(チャン・イーモウ)氏が北京で朝日新聞との単独会見に応じ、開会式の演出に込めた狙いなどを語った。9歳の少女の「天使の歌声」が「口パク」だったことなどで批判されている点は「演出で認められる範囲だ」と弁明した。主な内容は次の通り。
――開会式の自己採点は。
「上出来だった。複雑な構成だったが、チーム全員がミスを犯さなかった。3年近い準備期間があり、中国国民の強い期待を肌で感じ、プレッシャーは大きかった。映画づくりとは程度が違う」
――古代中国の4大発明を結び付けた演出が印象的だった。
「舞台にした紙は幅11メートル、長さ22メートル。古代の山水画の世界、現代の子供の笑顔、色彩など、念入りに考えた」
――世界に伝えたかったメッセージは。
「一つは中国の輝かしい歴史。二つ目は世界の人々と同様、素晴らしき未来を願うということだ。今日の世界は中国と外国を分けられないし、地球は一つの家族だ」
――多くの人々を感動させた少女の歌声が実は「口パク」だった。中国のネットでも論争が起きている。
「あれは私が決めた。議論が出るとは思っていた。我々は開会式の完璧(かんぺき)な美しさを追求し、3人の女の子を準備した。モラルの問題ではないし、そんなに重大な問題とは思わない。一種の創作だ。子供たちにとっても誇張して騒ぐべきではない。演奏も多くは録音を使っている。過去の五輪でも演奏は録音が多く、それはごく正常なことだ」
――外国メディアの批判的報道をどう思うか。
「気にとめない。芸術の創作上のことで小さなことを意図的に拡大するのはよくない。それで開会式を否定しようとするのはなおさらよくない」
――チベット、ウイグルなど少数民族の問題にも関心が集まっている。
「我々は小さい頃から中国は多民族国家だとの概念を持ってきた。中国の立場からは56民族が団結するのが望ましい。開会式でも皆で一つの家庭を作るとの考え方を示したつもりだ」
――五輪後の中国はどこに向かうのか。
「五輪がいい刺激になり、開放政策が保たれ、世界との交流がより進み、文明的であることを願っている。開会式で『和』の精神を強調したように、古代以来の哲学や様々な資産と密接につながった発展をめざすべきだ」
「20年前、30年前と今は違う。私が子供の頃は政治の時代で、文化大革命のときは農村で3年、工場で7年労働し、それから進学できた。政治的動揺や戦争がなければ中国は安定した道を歩めるだろう。私は楽観している」
――閉会式の演出を少し明かしてくれないか。
「男子マラソンが終わってからで準備時間がほとんどなく、大がかりなハイテクは使いにくい。選手たちがお別れするパーティーのような面もあり、観衆と一緒に楽しめるような場にしたい」(北京=編集委員・加藤千洋)
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張芸謀氏 中国を代表する映画監督。50年生まれ。87年に「紅いコーリャン」で映画監督としてデビューし、ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受けた。主な作品に「あの子を探して」「HERO」「初恋のきた道」など。06年に日本で公開された「単騎、千里を走る。」では高倉健さんが主役を務め、注目を集めた。