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(15日、柔道 男子100キロ超級)
決勝だけ一本を取ることができなかった。それでも先に攻めて、無尽蔵のスタミナを武器に動き回る。バテた相手に何もさせず「指導」二つで勝った。
21歳の五輪王者は胸を張った。「自分の柔道です。完全に勝ちにいきました」
そり上げた頭に細い目を光らせる若者は、徹底した勝利へのこだわりを突き刺すような言葉で口にしてきた。
「美しい技がいいのなら、体操競技にいけよ」
「柔道はルールのあるけんかだ」
斉藤仁監督は「あいつの目は土佐犬のようにギラギラしている」と言う。殺気立つ野武士の空気を身にまとう。
試合を終えた石井は言い放った。「自分はスポーツをやっていない。戦いだと思っている」。不振続きの男子陣に最も足りない気迫を、日本柔道界の異端児が示して見せた。
大阪府茨木市の実家の自室に、自分で「世界一」とワープロ打ちしたA4サイズの紙が張ってある。その目標に向かって、まさに「世界一」の練習をこなしてきた。
中学時代から、部活が終わると実業団の練習に向かった。東京・国士舘高では朝6時から始まるトレーニングの1時間前に起きて走った。
野武士は1人でいることが多い。「同級生はさぼっているやつが多かったから口をきかなかった」
「勉強をしながらだと試合に勝てない」。そう言って昨秋、国士大に休学届を書いて先生に引き留められた。06年に史上最年少で全日本選手権を制し、今年2度目の優勝を果たして五輪切符を手にした。
畳を離れると、実は寂しがり屋だ。本当は、1人がたまらないときがある。小さいころ、犬小屋の中で犬と一緒に寝たことがある。昨年末には生後間もないミニチュアダックスフントを購入した。大学の寮でこっそり飼っていたのがばれ、実家に引き取ってもらった。
すべてを勝利にささげた孤高の若者。こんな男が、まだ日本にいた。(柴田真宏)