国際オリンピック委員会(IOC)がサマランチ前会長時代の80年代にプロ解禁に舵(かじ)を切って以降、五輪は「最高のアスリートが集う祭典」に姿を変えた。今夏も、各競技の億万長者たちが北京に集う。
サマランチ前会長にインタビューした際、北京五輪で楽しみな競技を聞くと、「男子のテニスはすごい。フェデラー、ナダル、ジョコビッチ……。世界のトップ3が全員出てくる」。
テニスが64年ぶりに正式競技に復活したのは、サマランチ会長時代の88年ソウル五輪。今はほとんどのトップ選手が集う。
米経済誌フォーブスが発表した「北京五輪に出場する選手の長者番付」を見ると、世界ランキング1位、ロジャー・フェデラー(スイス)の推定年収は4位だ。
トップ10の最大勢力は1位コービー・ブライアント(米)、2位レブロン・ジェームズ(米)をはじめ、7人を占める米プロバスケットボールのNBA勢だ。開催国・中国のスター姚明(ヤオ・ミン)は5位。バスケットでプロが解禁されたのは、マイケル・ジョーダンら米国の「ドリームチーム」が金メダルに輝いた92年バルセロナ五輪から。NBAのレーカーズで活躍する10位のパウ・ガソル(スペイン)は、地元での五輪を12歳で見て、NBAの妙技に触発された世代だ。
バスケットボール以外のトップは3位のサッカーのロナウジーニョ(ブラジル)。五輪のサッカー男子はU23(23歳以下)で争うが、1チーム3人まで認められるオーバーエージ枠での参加だ。W杯、欧州チャンピオンズリーグ、国際サッカー連盟の年間MVPなど幾多の栄光に浴してきたロナウジーニョにとって、五輪金メダルは、まだ手にしていないタイトルだ。
女子の番付トップは推定年収2600万ドル(約28億4千万円)のテニスのマリア・シャラポワ(ロシア)だったが、7月末の大会で右肩を負傷し欠場が決定。同じテニスのセリーナ・ウィリアムズ(米)の1400万ドルが1位と見られる。
これらのアスリートに共通するのは、競技の年俸や賞金ではなく、スポーツメーカー、清涼飲料など「広告塔」としての収入も多い点。
陸上や競泳などは五輪メダリストの名声が、その後の人生の収入を左右するケースが多い。しかしプロスポーツの大富豪にとっては、「名誉」をかけた戦いといえる。(稲垣康介)