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美しい勝利、困難な時代 国際ルールに沿った戦い

2008年05月03日11時52分

 柔道の若き全日本王者、21歳の石井慧(さとし)(国士大)は、ヒールになっていた。

 4月29日、北京五輪の男子100キロ超級代表最終選考会を兼ねた全日本選手権の決勝で、技ありをリードするとひたすら逃げた。反則を重ねながら優勝し、代表に選ばれたものの勝者をたたえる会場の拍手はまばらだった。

 多くの観客は最後まで一本を取りにいく柔道を期待していたのに、歴史と伝統を誇る全日本王者にふさわしくない戦いぶり。そう見られた。

 とはいえ、石井のようにポイントを奪って逃げる試合運びは今の国際ルールに沿ったスタイルだ。男子73キロ級の北京五輪代表、金丸雄介(了徳寺学園職)は「世界で金メダルを取るには、ああいう柔道をしないといけない。理想は求めるべきだが、現実がある」と話す。

 金丸は豪快な背負い投げが得意で01年世界選手権で準優勝したが、その後は不振に陥った。昨年の世界選手権では背負い投げを封印、ポイント狙いの柔道で3位に入った。五輪実施階級で日本男子唯一のメダルだった。

 その意味で、今回の石井のスタイルを非難しようとは思わない。柔道界では品格がないとされるが、勝利への執念はだれよりもあった。

 日本柔道は一本勝ちにこだわり続けてきた。井上康生は芸術的に相手を投げて勝ち、人気が高かった。でも世界のレベルは上がった。美しさと勝利の両立は難しくなった。

 井上の引退は、理想と現実が一致した良き時代の終わりを象徴するように思える。

 理想を求めながら、今の日本柔道は負け続けている。執念も感じられない。きれいに投げることができなければ、石井のように徹底して結果にこだわってもいいのではないか。(柴田真宏)

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