「中国は変わっていくと思う」。練習拠点の福建省チームの体育館で話す陳宏
アテネ五輪バドミントン男子シングルス5位の陳宏は昨年初め、中国の国家チームを離れ個人で国際大会に出場する「自由人」になった。
チームは厳しい管理下に置かれ、大会に参加できるかどうかは国家体育総局の判断次第。07年1月4日の世界ランクは4位だったが、若手の台頭で出場機会が減っていた。遠征費用を自己負担するなどの条件で、体育総局から特例として認められた。
スポンサーもつき「個体戸(個人経営者)」と呼ばれ、ほとんど例のない試みとして注目された。しかし、北京五輪出場権にかかわるポイントを得られる大会で、中国の若手選手との対戦時に棄権を続けた。国の意向が働いた結果との見方に「具体的には言えないが、国家の利益は大事だ」と話した。
最新の世界ランクは13位。中国選手が上位にひしめき、北京五輪出場は絶望的だ。「想像していたような自由はなかった。ただ自分の実力、責任で試合に出るのは中国以外では当たり前。自分のような選手は増えていくのではないか」
小さいときから国を挙げた強化で育てられる中国の選手。経済の市場化が進み、個人の自己責任が求められる場面が増えている。
国家体育総局は数年前、引退する選手の職業あっせんを原則的に取りやめたと、ある関係者は明かした。元マラソン女子の艾冬梅さんが生活苦から国際大会のメダルを売りに出そうとしたと報じられ社会問題となったが、関係者は「今ではどこにでもある話」。セカンドキャリアを支援する「中華全国体育基金会」は年間約2千人の選手に通学費用を援助する。「政府には選手の引退後をすべて引き受ける余裕がなくなった」と関係者は話す。
卓球で92年バルセロナ、96年アトランタ両五輪で計4個の金メダルを獲得し、引退後は英ケンブリッジ大で学ぶトウ亜萍さんは言う。「時代は変わった。今は中国選手もスポーツの道を歩むと決めた瞬間から、引退後の生き方を考えなければいけない」(阿久津篤史)
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北京五輪を開催する中国のスポーツを取り巻く状況が変わろうとしている。その変化を追った。