現在位置:asahi.com>北京五輪への道>コラム> 奔流中国21 > 記事 ![]() 〈外交パワー:下〉アフリカ援助、国連で力2008年05月07日 すれ違うのがやっとの泥道で、給水タンクローリー3台が順番にUターンを始めた。内戦後の復興が進む西アフリカ・リベリアの首都モンロビア。5%しか舗装されていない道路は雨期には泥沼と化す。道路補修による突然の通行止めは、国連リベリア支援団(UNMIL)の中国人輸送部隊にとって、日常茶飯事だ。
市内の給水所に到着し、休む間もなく12トンのタンクを水で満たしていく。「朝6時に給水して、各部隊の宿舎や国連の活動拠点に水を届けるのが仕事。道はこむし、昼食抜きで働くこともしばしばだが、国際社会に貢献しているという誇りが支えてくれる」と担当の董漢宝さん(31)は言う。 輸送部隊は240人。約1万4千人いるUNMILの各部隊への給水や給油、物資の運搬、要員の移送などを担う。工兵部隊や医療部隊、警察などを合わせて、派遣要員は計581人(2月末現在)。中国が参加する平和維持活動(PKO)部隊では最大規模だ。 リベリアへの大量派遣には理由がある。 同国は77年に中国と国交を樹立したが、その後2度、台湾と外交関係を結んだ。03年9月、中国が安全保障理事会でUNMIL設立決議に賛成した直後に中国と「復縁」。中国は発足当初から欠かさず要員を送り続けている。 支援はPKOだけではない。学校建設や国軍の兵舎整備など10件ほどの援助案件が進行中のほか、中国の民間会社がモンロビア周辺の道路や橋の補修も手がける。 「中国は平和を守り、道を直し、職も与えてくれる」と市内に住む大工のエリックさん(36)。ブル副外相は「台湾と外交関係を持ったこともあったが、もう逆戻りはしない」と断言する。 リベリアに最大の部隊を派遣した理由について、王光亜・国連大使は「要請に基づいたもので、政治的な関係進展のために派遣先を選んでいるわけではない」と強調する。だが、周欲暁・駐リベリア大使は「小さく貧しい国だから立場を変えやすい。今度こそ関係を維持することが大切だ」と語る。 中国が世界に展開するPKO要員の4分の3がアフリカに集中する。リベリアのほか、石油開発を進めるスーダンや、武器の供与先とされるコンゴ(旧ザイール)の多さが目立つ。アフリカへのPKO派遣は、台湾を封じ込め、資源を確保し、軍需産業を潤わせるという中国の外交戦略と不可分だ。 昨年9月、西サハラのPKOで、中国人として初めて軍事司令官に就任した趙京民少将(53)が言う。「培われた良好な協力関係が、多くのアフリカの国々の支持という形で、中国の国益につながっている」 もう一つ重要なのは、国連における中国の発言力強化につながっていることだ。 ■途上国代表の大国 「すべての発展途上国が平等な立場で世界貿易に参加できるよう、国際社会は支援すべきだ」 ニューヨークの国連本部で2日、途上国の開発目標を協議する総会本会議が開かれた。中国は「途上国の代表」を強調し、先進国に途上国援助の拡大を迫った。 気候変動問題では「温暖化の原因をつくった先進国が責任を取るべきだ」と説き、安保理改革では「増やすならまず途上国を」と訴える。国連加盟192カ国中、130カ国以上が加わる最大の途上国勢力「G77プラス中国」などでの支持を背景に、中国は影響力を維持してきた。特に総会では「数の力」がものを言う。日本の常任理事国入りも、この壁に阻まれた。 一方、常任理事国として「大国の責任」が問われる安保理では、時に米欧とも足並みをそろえる。 先月18日、ミャンマー(ビルマ)情勢をめぐる安保理会合。米国が、軍政に圧力をかけるため「新憲法草案を問う5月の国民投票を前に議長声明を出すべきだ」と提案した。ロシアやインドネシアが慎重論を唱える中、中国は黙ったままだった。「以前なら我先に反対意見を述べていたはず。この問題で突出するのは得策でないとの判断だろう」と安保理筋はみる。 ミャンマー問題での中国の対応は、この1年余りで大きく変わった。昨年1月に米国が軍政非難の決議案を提出した際は8年ぶりに拒否権を行使。だが、死傷者が出た9月の騒乱後は一転、「強い遺憾」を示す議長声明に賛成した。 スーダンのダルフール危機をめぐって中国は「対応が甘い」との批判を浴びていた。北京五輪ボイコットの声も出る中、方針転換にはこれ以上の人権批判は避けたいという事情があったとみられる。それでも、「騒乱直後のガンバリ事務総長特別顧問の現地入りは、中国の尽力がなければ実現しなかった」と国連関係者。軍政にビザ発給を求めただけでなく、「内容のある訪問にしなければダメだと説得してくれた」と評価する。 「イランや北朝鮮の核問題では厳しい経済制裁を拒み、中東に弾道ミサイルを輸出するなど、核不拡散への協力も足りない」(米国のボルトン前国連大使)との批判は根強い。だが、「自国に有利なように大国と途上国の顔を使い分ける」(日本外交筋)この国を、世界はもう無視できないという現実がある。 ■PKO派遣、1万人超す 中国が積極的に国連活動に関与するようになったきっかけの一つが、89年の天安門事件と言われる。改革開放を進める中国にとって、事件後の欧米からの非難と経済制裁は大きな痛手だった。信頼回復に向けた手段の一つとして90年に初のPKO要員を中東に派遣。以来、18のPKOに計1万人以上を送り出してきた。 現在の派遣要員数は常任理事国の中で最多、全体でも12位の1962人(2月末現在)。国連事務局の職員数も前年比約17%増の70人(07年6月末現在)に上る。PKO予算の分担率も00年の約1.2%から、08年には約3.2%まで増えた。一方、PKO予算の約17%を拠出する日本の2月末現在の要員派遣は36人で、主要国の中では最低の83位。07年6月末現在の国連事務局の職員数は108人で中国を上回るが、部長級以上は6人で、中国の10人より少ない。(松下佳世) PR情報 |
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