五輪聖火の歓迎式典で、民族衣装をまとい笑顔で踊る若者ら=3月31日、北京・天安門広場、林敏行撮影
■北京
「チベット族の同級生に異常がないか、よく注意しなさい」
チベット・ラサでの騒乱が起きた直後の先月中旬、北京市内のある大学で、クラス委員の学生の携帯電話にメールが届いた。大学の学部事務局の先生からだった。
中国政府の監督下にある国内のテレビ局は、ラサで暴れるチベット族の僧侶らの姿を連日流していた。少数民族に無関心な漢族の学生らが、単純に「怖い」と思っても無理はないのかも知れない。だが問題の背景には、1951年の軍進駐に始まるチベット族支配の歴史がある。それを無視して政府の主張を繰り返すのは宣伝であって報道ではない。漢族の女子学生も「むしろテレビを見てチベット族の同級生が反感を持つんじゃないかと心配」と話す。
厳戒警備下の天安門広場で先月31日、胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席が北京五輪の聖火リレー開始を宣言。民族衣装をまとった大学生による踊りも披露され、56民族の「団結」をアピールした。だがその裏には、青春をともに過ごす仲間さえ監視させる現実がある。このメールのやり取りをチベット族の同級生が知ったらどう思うだろう。晴れがましいはずの五輪が、なかなかそうならない理由はここにある。(琴寄辰男)