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北京便り 重松清

街にあふれる熱気と笑顔

2008年01月01日

 サッカー男子に続いて野球も厳しい予選をみごと勝ち抜き、いよいよオリンピックイヤーの幕開けである。

 北京の街も、五輪モードに入りつつある。昨年7月と10月に訪ねた時には「平熱」の街の様子に拍子抜けして、のんびりしたペースの会場の工事に「間に合うのか?」とハラハラしたものだったが、12月の取材では機運の高まりを確かに感じることができた。

 市内随一の繁華街・王府井の歩行者天国にはオリンピックゲートが設けられ、道の両側には液晶モニター付きのスタンドが数十基も並んでいた。モニターの映像は、飛び込み、水泳、バスケットボール……。いずれも北京っ子の人気競技である。

 ひときわにぎやかだったのは、飛び込み台に立った合成写真を無料で撮ってくれる特設ブース。取材に訪れたのが日曜日の夕方ということもあって、順番待ちの長蛇の列ができていた。

 一方、メーン会場となる国家体育場(愛称「鳥の巣」)の工事も、ここに来て一気に進んだ。周辺ではまだスコップで土を掘っているものの、外観はほぼ完成して、団地さながらに立ち並んでいた作業員のプレハブ宿舎もだいぶ撤去された。

 本番ではハンドボールや体操の会場となる国家体育館では、昨年11月28日から12月3日まで、体操の五輪テスト大会が開かれた。

 日本は男子団体で2位、沖口誠選手(日体大)がゆかで1位、跳馬で3位、鉄棒では星陽輔選手(順大)が2位、田中和仁選手(日大)が3位に入る活躍を見せたが、会場のスタッフたちもなかなかの健闘ぶり――。なにしろ笑顔があるんだもの。

 10月におこなわれたテニスのプレ五輪大会では何を聞いてもニコリともしなかった若いスタッフが、こちらの「サンキュー」に笑顔で「ユー・アー・ウエルカム(どういたしまして)」……。空港やホテルでの対応も含めて、「少しずつ変わってきてるんだな、北京」というのがシゲマツの素直な感想である。

 3日間の取材の最終日は、マラソンコースを車と徒歩で走破してみた。

 天安門広場前をスタートして、世界遺産の天壇公園やハイテク街・中関村、北京大学と清華大学のキャンパスを通って「鳥の巣」へと至るコースは、北京の誇る観光ルートである。ただし、いまはコースのあちこちに工事用のフェンスが張り巡らされている。世界中に注目されるマラソンコースの美観を保つためか、古い街並みが次々に取り壊されているのだ。

 その光景にちょっと複雑な思いを抱きつつも、シゲマツが歩き疲れてへとへとになったマラソンコースを日本人選手が快走する姿を初夢(もちろん「夢」で終わっちゃダメですよ)として、2008年元旦――「好運、北京(グッドラック・ペキン)!」

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 しげまつ・きよし 63年、岡山県生まれ。91年に「ビフォア・ラン」で作家デビュー。01年には「ビタミンF」で直木賞を受賞した。

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