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奔流中国21

〈共産党はいま:下〉腐敗の闇、出口遠く 利権巡り、村長選で買収合戦

2007年09月14日

 緑豊かな畑が広がる北京市近郊の小さな農村が、選挙違反をめぐって揺れている。

写真王淑琴さんは、これまでに党から数々の「栄誉証書」を授与されている。それらをテーブルに並べて「模範党員」ぶりを強調した=北京市近郊の張家墳村で、坂尻写す

 人口約1800人の張家墳村で、村長にあたる村民委員会主任の選挙があったのは今年6月。しかし、落選した前主任で共産党員の王淑琴さん(54)は、今も主任室に居座っている。

 候補者2人は、ともに初回の投票で過半数に届かず、再投票で決着。得票差は初回の45票から再投票では約300票に開いた。

 「よく取材に来てくれました。実は大勢の村民が対立候補に買収されてしまったんです。だから今回の選挙は無効なんです」。王さんの自宅は、いかにも村の有力者のお屋敷といった風格だ。薄型テレビやオーディオセットが並ぶ応接間で、王さんは切々と訴えた。「たばこやビール、ジュースをケースごと贈られた私の支持者たちが、次々と翻意してしまった。飲食店での接待攻勢もすごかったんです」

 当選した前副主任の劉春民さん(41)の陣営は「王陣営も飲食店で村民を接待した」と反論する。これに対し、王さんは「それは私の支援者がやったこと。しかも劉陣営の接待攻勢を知って対抗しただけ。私たちは悪くないでしょ」と弁解した。

 北京市中心部まで車で約40分。マイカーを持つ富裕層にとっては通勤圏内にある村に、近年、開発の波が押し寄せている。村の一角には「欧州風」を宣伝文句にした豪華マンションが建設中だ。第1期の1500戸は平均価格が約1億円。古代ローマ風の広場や噴水のほか、ショッピングアーケード、学校や病院も併設される大規模開発だ。

 こうした事業の許認可権を握る村の幹部は、いわば「利権ポスト」。王さんの書斎には、副主任当時の劉さんが、土地を貸す権利を親族に譲り渡したことを示すという「証拠書類」が、いくつも保存されていた。ただ、王さんが党の上部組織に不正を訴えても、返事は「もっと具体的な証拠が必要だ」。こうした「敏感な問題」は警察や検察も取り合ってくれないという。

 末端の自治組織である村民委員会の選挙は、中国の国民にわずかに開かれた「直接民主主義」の窓だ。98年には新たな村民委員会組織法が成立し、選挙違反やリコールに関する規定も盛り込まれた。非共産党員の候補も珍しくない。張家墳村の村民委によれば、当選した劉さんも党員ではない。

 しかし、政策論争をたたかわせるというより、むしろ有権者教育の不徹底や候補者のモラルの欠如、監視体制の不備などから選挙違反が横行するなど混乱の方が目立つ。

 しかも、村民委の主任は村のナンバー2。「非党員村長」が誕生しても、その上には直接選挙ではなく、党内手続きで決まる共産党委員会の書記が座る。その過程でどんな不正があったとしても、部外者がうかがい知るのは困難だ。

●摘発の手足縛り、やまぬ不正

 党・政府機関の公用車は全国に400万台余り。その費用は4000億元(約6兆4000億円)。全国の財政収入の約13%を占める。公費による飲み食いは2000億元(約3兆2000億円)を超える――。

 国家行政学院の竹立家教授が昨年3月、中央党校の機関紙・学習時報に発表した文章が物議を醸した。

 財務省は「公用車は180万台で、費用は1000億元」などと否定。しかし、権威がある学習時報が報じたこと自体、公費乱用に対する党の強い危機感がうかがえる。

 今月13日まで北京の軍事博物館で開かれた「職務犯罪の処罰と予防展」によると、02年の第16回党大会以降、閣僚級16人が腐敗で処罰され、うち14人は愛人を囲っていた。03年以降に検察が立件した汚職事件は約17万件にのぼる。ただ、こうして表面化する汚職は氷山の一角との見方が一般的だ。

 「居安思危」

 平穏な時にも危難に備えて用心を怠らない、という熟語を題名にした党員向けの教材がある。

 党内の不正を摘発する監督機関、中央規律検査委員会の傘下にある出版社が昨年6月、DVDと解説本を作成。中央党校や各地の党支部で幹部教育に利用されているという。

 副題は「ソ連共産党の滅亡の歴史的教訓」。腐敗した特権階級が内部から党の崩壊を促した、と指摘している。公務員を監督する政府の監察省内に新設された国家腐敗予防局も13日、正式発足した。

 「党の生死存亡にかかわる」。共産党は04年9月の第16期中央委員会第4回全体会議で「反腐敗闘争」をこう位置づけ、党・政府を挙げてその対策に躍起となっている。

 しかし、権力は腐敗する。それを監視する報道機関も、摘発する捜査当局も「党の指導」を仰ぎ、手足が縛られている中で、腐敗が党の権力基盤を確実に侵食している。

 (北京=坂尻信義)

●ベトナムや多党制、改革モデル様々

 政治体制の踏み込んだ改革を求める声が、少しずつだが広がりつつある。

 「ベトナムの改革は注目に値する」。元人民日報副総編集の周瑞金氏が昨夏、ベトナム共産党の政治体制改革を評価する文章を発表し、論議を呼んだ。周氏は91年、トウ小平氏の意を受け、「皇甫平」の筆名で改革開放の加速を呼びかける論文を上海紙・解放日報に書いたことで知られる。

 ベトナムでは「党内民主」や「監督体制」の確立で成果を上げ、中央や地方の指導者選びなどでも中国は後れをとっていると嘆く内容だ。

 中国には「多党制」が必要と訴えるのは、北京大学法学院の賀衛方教授。昨年3月の座談会で「言論の自由」や「司法の独立」の必要性を唱え、保守派から激しく批判されたが、「あれは論争を呼んで面白かった」とひとごとのように振り返る。「日本の自民党のような党内派閥を作るのも選択肢の一つ。政治改革なしに汚職は一掃できない」と訴えている。

 ■腐敗で処分された最近の主な高官

(新華社通信などから。肩書は当時)

鄭篠萸・国家食品薬品監督管理局長  新薬承認で収賄   07年7月に死刑執行

陳良宇・上海市党委書記(政治局員) 不正融資への関与  07年7月に党籍剥奪(はくだつ)

宋平順・天津市政治協商会議主席   愛人のため職権乱用 07年6月に自殺

杜世成・青島市党委書記       重大な規律違反   06年12月に解任

邱暁華・国家統計局長        収賄や重婚など   06年10月に解任

李宝金・天津市検察長        重大な規律違反   06年8月に辞職

劉志華・北京市副市長        生活の腐敗と堕落  06年6月に免職

王守業・海軍副司令官        収賄や道徳的な堕落 06年6月までに解任

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