20年ぶりの4強入りを果たした宇部商は、「ミラクル宇部商」の名を21世紀に復活させた。準決勝に進出した公立校は同校だけ。甲子園常連校には県外から選手を集めたチームが目立つ中で、全員が県内出身者。地域に密着したチームの戦いぶりは堂々としており、最後まで高校野球ファンに感動を与えた。
「ここまで来られたのは好永の力投があったから」。準決勝敗退後、選手たちは口をそろえた。
エース好永貴雄投手は、山口大会を含め全10試合を1人で投げ抜いた。丁寧にコーナーをつき、緩急のある投球は相手打線に的を絞らせず、全国でも屈指の左腕に成長していた。
好永自身は、初戦の新潟明訓戦は緊張から「最悪の投球。変化球のコントロールが悪かった」と明かす。そこで、続く静清工戦はグラブの位置やリリースポイントを変えて臨むと、打たせて取る投球が復活。奪三振0ながら完封した。酒田南戦は、緩いカーブを中心に組み立てた星山卓二捕手のリードが奏功し、11奪三振の好投を見せた。
だが、1人で炎天下のマウンドに立つ連投から、次第に疲れを見せた。日大三戦こそ、打線の逆転劇で乗り切ったが、準決勝では中盤から握力がなくなり、終盤につかまった。
一方、采配30年になる玉国光男監督の強気の野球が、甲子園で威力を発揮した。静清工戦は、ヒット・エンド・ランや盗塁が捕手に読まれ、アウトになる場面があった。
しかし、玉国監督は「方針を変えると選手たちが不安になる」と、采配は一貫していた。この「玉国野球」は日大三戦に大きな結果を生んだ。
8回に逆転され、1点をリードされた土壇場の9回表、先頭打者が安打で出塁すると強攻。主将の井田和秀左翼手が安打で出塁し、続く上村拓矢一塁手の三塁打で、一気に逆転した。
玉国監督は「上村は長打力がある二番打者。相手の裏をつく狙いだ。バントは考えなかった」と振り返った。
宇部商の強さの裏には、選手たちの明るさもある。1点を争う緊迫感の中でも明るく振る舞う姿が目立った。試合直前でも緊張することなく、まとまりを持って戦った姿が印象的だった。
ところで、近年の山口代表は常連校が目立つ。今大会、長崎代表の清峰は春夏通じて初出場ながら、強豪校を次々に破った。宇部商の躍進をはずみに、県内の高校野球界全体で「甲子園で勝つ」ことを目標に競い合ってほしい。