「恩返しができました」。岩本達大捕手(3年)は試合後、にっこりと笑った。
2年生の春、酒田南に同校野球部で捕手をしていた鈴木剛コーチがやって来た。それまで捕手のコーチはおらず、先輩のプレーを見て勉強するしかなかった。
最初は球を後ろにそらしてしまうことも多かった。「とにかく体で止めるんだ」とコーチに言われ続けた。週2回のショートバウンドの捕球練習を欠かさなかった。「コーチがいなかったら今の自分はいませんでした」
鈴木コーチも99年、主将として選手権大会に出場したが、1回戦で沖縄尚学に敗れた。
「今度は自分が絶対に勝つ」。そう意気込んで臨んだこの試合、岩本君は成長の跡を見せた。
3点差に追い上げられて迎えた7回、連打で無死一、二塁とされてしまう。
だが、二塁走者のリードが大きいのに気づくと、すぐさま二塁へ送球。戻りきれなかった走者を自慢の肩で挟殺にしとめた。
9回、力んで外角に外れた金本君の140キロ超の直球に食らいついた。「死にものぐるいで止めました」。6回、自分の捕逸で1点を与えてしまったが、過ちは繰り返さなかった。
コーチに学んだのは技術だけではない。この試合は捕手として一番大切な「頭脳」がエース金本明博君(3年)の好投を導いた。
試合前、「シュートで内角を攻めよう」と金本君と決めていた。
「今日の金本は外角のカットボールが切れている」。その日によって違う変化をする球だが、「落ちながら曲がる」好調な時の変化をしていた。
「相手打者はベースから離れて立つ選手が多い。外角を攻めよう」。試合の中で投手の調子と相手の狙いをしっかりと見極め、当初の配球を切り替えた。
岩本君のミットには「最高の女房役」と刺繍(ししゅう)されている。コーチとの合言葉だ。試合後、金本君は「もちろん最高の相棒ですよ」と笑った。