 |
「悔いを残さないために」。桐朋の居村裕平投手は、最後までチェンジアップに望みを託した=立川 |
最後に選んだ一球も、チェンジアップだった。狙ったのは左打者の外角ぎりぎり。「ここまでやれたのは、この球があったから。悔いを残さないためにも、ほかの球種は考えられなかった」
同点で迎えた9回裏1死。桐朋の主戦・居村裕平君は都日野台から安打を浴びると死球、四球と続き、満塁としてしまった。1点でサヨナラ負けだ。三つ続けてボールの後、直球二つが決まり2―3の場面。ボール気味のチェンジアップをファウルされ、ロージンバッグを手に間を取った。
「テンポ良く投球するのが居村の持ち味」と捕手の高橋悠介君。さらに2球ファウルされると屈伸をして呼吸を整えた。
背番号1を受け取ったのは今春。昨秋まで谷口誠君の控えに回っていた。「いつもライバルだと思っていた。負けたくない思いも強かった」
昨春から筋力トレーニングなどで直球の速さを増す努力を重ねた。チェンジアップとの緩急差をつけ、谷口君をしのぐエースになるためだった。
今春、投手陣と高橋君は、誰が1番を背負うかを話し合った。くじ引きにする案もあったが答えは出ず、田中隆文監督に判断を委ねた。結論は「2人ともエース。1番はゲームの作り方が少し優位な居村」だった。
15日の初戦は背番号11の谷口君が投げ、勝ち上がった。谷口君は「1番をもらえなかったのは悔しいけど、初戦を任せてもらって自信がついた」。居村君も「谷口が勝ってくれたからこそ、今日の試合が回ってきた」。お互い背番号へのこだわりは薄れていた。
そして、居村君の最後の1球。「これでどうだ」。自信はあった。だが、少し外側にそれ、主審はサヨナラ押し出しのボールを宣告した。
「居村の投球は良かった。最後は代打でもいいから試合に出たかった」と谷口君。居村君は「勝って、次の試合を谷口に回したかったのに」と悔しがった。