第87回全国高校野球選手権大会の初日、智弁和歌山は青森山田(青森)に5―7で敗れ、1回戦で甲子園を去った。和歌山大会で1試合平均9.6点を挙げた打線は、青森山田の好投手・柳田の前にあと1本が出なかった。2年生が主力のチームだったが、最終回に3年生の選手たちが「猛打の智弁和歌山」の意地を見せてくれた。甲子園にかけてきた選手たちの「夏」を振り返る。
■投手力が課題
組み合わせ抽選で初戦が開幕日と決まった。試合前、高嶋監督は「投手陣はまだ和歌山大会の疲れがとれきっていない」と不安を口にした。主戦・竹中のひじの具合もよくなかった。課題だった投手力が、甲子園の初戦でも大きく響いた。
先発は、和歌山大会の松隈に代わってエースナンバー「1」を背負った2年生の竹中。「相手は変化球に弱い」と感じた竹中は序盤、変化球主体の投球で打者を打ち取ろうとした。初回はよかったが、2回には甘い球を狙われ3連打を浴びた。
それでも序盤は3―1と先行していた。捕手橋本(2年)は「低めに」と竹中を懸命にリードしたが、5回に右中間への三塁打、左越えの2点本塁打を相次いで打たれ、逆転を許した。和歌山大会では逆転、再逆転で苦境を何度も乗り越えてきた智弁和歌山だが、普段は見られない動揺が広がり、試合の流れが青森山田に傾いた。
■決定打出ず
打撃面では11安打を放って本領を発揮したが、大事な場面での決定打に欠けた。
甲子園大会前、智弁和歌山の選手たちは球速を150〜155キロに設定したバッティングマシンで練習していた。青森山田の柳田は常時140キロ台の速球を投げる左腕だったが、「速いとは感じなかった」と各打者は口をそろえた。
しかし、柳田は直球だけでなく、カーブ、スライダーを織り交ぜた巧みな投球術で智弁和歌山の打線を惑わせた。4回には前田哲と亀田の連打などで2点を奪ったが、終盤の反撃時にいい当たりが深めに守った外野手の正面に飛ぶなど、ツキにも恵まれなかった。
■3年生の意地
智弁和歌山の野球部は各学年ほぼ10人ずつ。甲子園では原則として3年生の全員がベンチ入りする。バッテリーなど2年生主体の今回のチームにあって、最終場面で起用された3年生選手たちのがんばりをたたえたい。
高嶋監督は8回裏、バッテリーを三宅と東、右翼手を傘木に代えたのを皮切りに、9回表にも代打攻勢をかけて3年生選手の全員をグラウンドに送り出した。「ここで発奮してほしい」と、勝負を3年生に託した。
3年生は、その期待に見事に応えた。9回表、辻本が一塁強襲安打で出塁。代走で出た浜崎を代打の堀本が三遊間安打で進め、捕逸に助けられて無死二、三塁。前田逸のゴロと古宮(2年)の犠飛で2点を追加した後、さらに2死から前田創が左前安打で出塁――と、最後の最後まで粘った。
県内でも最も厳しい練習に耐えてきた智弁和歌山の選手たち。その成果が、最終回に凝縮されたような気がした。大会翌日、学校へ戻った1、2年生は早速練習を再開した。県の代表として力の限りプレーした3年生と新たなスタートを切った1、2年生に心から拍手を送りたい。