あこがれの舞台で打って走って投げ、思いっきり声を出し合った。その一つひとつに球場全体がどよめいた。この夏の本番、グラウンドで、そしてスタンドで全員が主役だった。
試合後の通路は先に勝者が、続いて負けた学校が引き揚げてくる。「すべて出し切った。もう1回やりたいという気持ちはありません」と全身汗まみれの田中暁。捕手の上野はいつもの笑顔で周りと抱き合い、「いままで、ありがとう」。
「あこがれのここで本塁打を打てたのが最高の思い出」(堀江)、「無失策で自分の仕事を果たせた」(村田)、「悔しいけど甲子園で終われたのは誇り」(田中裕)、「結果がすべて。相手が上だった。悔いはない」(西林)、「甲子園で3試合投げ無失点。目標を果たせた」(八木)。みんなの表情はすがすがしかった。
その中でわきのベンチに座り込み、頭を抱え込んでいた尾崎。この試合も再三の好守が光った。しかし、徳島大会から数えて唯一だった7回の失策は失点につながった。泣きじゃくり、立ち上がれなかった。唯一、2年で出場した安原は、「お前には、来年があるだろう」と先輩に抱えられながら歩くのがやっと。「先輩たちと、もっと野球がしたかった」。後は言葉にならなかった。
「甲子園で成長した」と言われる藤は「球は見えていた。勝てない相手ではなかった」。負けず嫌いの主将柳田は「僕らの勝ちたいという気持ちと、向こうの気持ちの張り合いだった。トマコマは強かった。でも勝ちたかった」と唇をかんだ。
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「守備から攻撃のリズムをつくる」。そういう相手のお株を奪う前半の展開だった。
先制後、相手の先頭打者に本塁打を浴び、田中暁も内野陣も引き締まった。リズムよい投球と度重なる好守。2番手投手が好投しながらも、ペースをつかみ切れない相手は、意識的に打席を外すなど「前年の王者」らしくない野球をしていた。
その土台には、「このまま終われるはずがない」という鳴門工の慎重な姿勢があった。5点差をつけ、勝ちを意識したのか、7回にそれが崩れた。
実際に田中暁は「もしかして勝てる、という力みがあった」という。まずい守備もあって先頭打者が一気に三塁へ。その後、死球に単打、犠打。三塁側のベンチもアルプスも勢いづいた。
マウンドで円陣。「落ち着こう」と声を掛け合ったが焦りは消えなかった。この回、被安打5、3失策。徳島大会から経験のない乱れだった。