連覇の瞬間が近づいていた。9回表2死無走者。二塁を守る林裕也主将(3年)は、心の中で昨夏優勝した先輩たちの名前を言った後、「お願いします」と呼びかけた。田中将大投手(2年)が、最後の打者を三振に打ち取ると、両手を広げ、マウンドの歓喜の輪に加わった。
チームのテーマは「日本一」。だが今夏、林主将の口からはその言葉は聞かれなかった。「昨年のチームがしたことが、どれだけ大きなことだったかを実感した。簡単に口にできない」
林主将は昨夏、横浜の涌井秀章投手(現西武)からサイクル安打を放つなど主力として活躍。優勝の原動力となった。優勝後、駒大苫小牧を取り巻く環境は激変。道内は「駒苫フィーバー」に沸いた。自身は周囲から「サイクル男」と、打つことが当たり前に見られた。結果を求めるあまり不調に陥った。春から「精神安定のため」深夜まで素振りをする日々が続いた。
そして迎えた夏。「楽しむことをテーマに、チームが一つになった」。南北海道大会で優勝し甲子園への切符を手にしたとき、重圧から解き放たれてベンチで号泣した。
吹っ切れて臨んだ甲子園では人が変わったように笑顔ばかり。5試合で18打数10安打。「全国優勝校」のイメージと戦い続けた夏は、「連覇」という最高の形で終わった。
深紅の大優勝旗が再び、その手に戻ってきた。「自分たちの手にあるのが当たり前の感じがした。手にしっくりきた」。林主将は言ってのけた。