決め球避け、教訓の本塁打 古谷真紘投手
2007年03月26日
同点で迎えた9回裏。先頭打者の初球に捕手・川辺健司君が出したサインはスクリューボールだった。マウンドの古谷真紘君は小さく首を振る。宇部商7番の林裕行君は、真ん中高めの直球を振り切った。左翼スタンドのポールに当たってグラウンドに落ちたボールを、エースは「信じられない」という表情で見つめた。
スクリューボールは勝負球だった。握りは同じでも、コースによって曲がりが微妙に変わる。右打者に対して内角は沈むように変化し、外角は逃げるように落ちる。変化に惑わされた打者のバットは大きく空を切る。昨秋の県大会、関東大会での快投を支えた主戦の決め球を、チームメートと「ふるまきゅう」と名づけた。
スクリューを生かすために直球とスライダーを磨くことが秋以降の課題だった。冬場の体力トレーニングで体重が4キロ増え、2月に本格的な投球練習を始めたところで、肩を痛めた。球威のある球を投げようと力み、投球フォームのバランスが崩れた結果だった。
大会直前まで思うように投げられない日々が続いた。そんな古谷君に山本秀明監督は、「エースのお前が、150球でも何球でも投げてこい」と言って送り出した。
「気持ちがひいたら絶対負ける」
不安な気持ちを振り払い、マウンドに上がった。序盤から自分のペースでテンポよく投げた。2回1死満塁のピンチも切り抜けて宇部商の勢いを止めた。8回に同点本塁打を放つなど、打撃でもチームを盛りあげた。
宇部商の国本鐘悟主将も「スクリューより、真っすぐが伸びていた。いい投手だと感じた」。しかし、それが落とし穴だった。
9回。先頭打者への初球で制球に不安のあったスクリューを避け、直球でカウントを取りに行った。そこを林君に狙い打たれた。
ここ一番の場面で、決め球を自信持って投げられるように成長し、もう一度戻ってくる――。教訓を胸にしまい、古谷君は選抜のマウンドを後にした。
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