10回、2死二塁。1点取らねば、大阪桐蔭の夏は終わる。打席には4番・平田良介。前日の準々決勝で3本塁打をたたきだした主砲は、この日まだ無安打だった。
「フルスイングをする」。それだけを思って、バットを構えた。5球目。外角に逃げる変化球に「一瞬、迷いが出て」バットを止めた。審判の右腕が上がった。三振。呆然(ぼうぜん)と審判を見つめ、そしてうつむいた。
「悔しい、悔しい、悔しい……」。試合後、何度も繰り返した。それから、こうつぶやいた。「万全じゃないのにここまでできた。自分の体をほめてやりたい」
満身創痍(まんしんそうい)の大会だった。6月末の練習試合で痛めた足首は完治せず、宿舎のホテルには毎晩かかりつけの整体師が訪れた。手首に痛みもあったし、寝違えもした。
「打てなかったのは自分の実力。今後に生かしたい」と力強く語った。仲間は甲子園の土を集めていたが、平田は持ち帰らなかった。