豪速球で三振の山を築いたエース、1試合に3本塁打を放った主砲。大阪桐蔭は数々の「伝説」を残し、甲子園を去った。互いに信じ合う「全員野球」で挑んだ5試合。人々に鮮やかな記憶を焼き付け、感動を与えた。第87回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)第14日の19日、大阪桐蔭は連覇を狙う駒大苫小牧(南北海道)と準決勝を戦い、延長の末5―6で敗れた。5点のリードを奪われてもあきらめず、終盤には追いついた。大阪桐蔭の健闘に、4万4千人の大観衆は大きな大きな拍手を送った。
■エース辻内「負ける気しなかった」
辻内崇伸はこの試合でも150キロの快速球を連発。変化球も決まり、16三振を奪った。それでも勝利はつかめなかった。「2回に5失点、最後にも1点とられた。みんなに悪い……」。試合後、大粒の涙を流した。
2回、先頭打者に四球を与え、バント処理にもたつき自らピンチを招いた。しかし3回から9回までは被安打2。駒大苫小牧打線を完璧(かん・ぺき)に抑えた。「負ける気はしなかった」。仲間が取り返してくれると信じていた。
7回、2死一塁で左中間へ本塁打を放ち、自らのバットで2点を返した。マウンドで感情を表に出さない辻内が、右のこぶしを何度も突き上げ、満面の笑みを浮かべダイヤモンドを駆けた。
「初戦はうまくいかなかったけれど、2戦目からは楽しく投げられた」という。5試合で奪った三振は計65。「制球力にもっと自信をつけたい」。甲子園で1試合ごとに成長したエースは、さらなる飛躍を誓った。
■主将 甲子園に誰より強い思い
2点を追う8回。1点差に迫る適時二塁打を放ち、同点の本塁を踏んだのは主将の小林晃徳だった。
主将としてチームを引っ張った小林には、野球ができなかった半年間がある。2年前の12月、左ひざの軟骨がばらばらになっていた。迷った末、昨年2月にひざにメスを入れた。昨春の選抜大会ではアルプス席にいた。
歩く練習から始め、バットが振れるようになったのは6月。7月になって試合用のスパイクを履くことができた。その直後、西谷浩一監督は小林を主将に指名した。「甲子園にかける思いがだれより強い」。そう思ったからだ。
「最高の仲間たちと最高の舞台に立てて本当に良かった」。涙が乾いた後、きっぱりと言った。
■左翼手 「絶対刺す」力こめた送球
「勝利への意地が見えるスーパープレー」。西谷浩一監督がそうたたえたのは、10回に左翼手・篠原大が見せた守備だった。
駒大苫小牧が1点を勝ち越し、さらに1死二塁。岡山翔太の打球は篠原の前に落ちた。二塁走者が三塁をけった。「絶対刺す」。篠原が思い切り投げた返球は、捕手の川本健人の正面へ。見事に仕留めた。
篠原は昨春まで投手だった。しかし辻内がいた。「レベルが違う」。足の速さと肩の強さを買われて野手へのコンバート。居残り練習を繰り返し、勝ち取ったレギュラーだった。「投手だったから、辻内のしんどさがわかる。助けてやりたいと思って、必死に投げた」