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アルプスの応援席に一礼し、ベンチにむかう伊万里商の選手たち |
第78回選抜高校野球大会が開幕した23日、春夏通じて初めて甲子園の土を踏んだ伊万里商は、第3試合で智弁和歌山と対戦し、0―4で敗れた。ベンチとスタンドでは、伊万里商野球部に26年かかわり、大会直前に急逝した西尾吉春・元監督の遺影が試合を見守った。強打の伝統校に長打を許さず、持ち前の粘りの野球を見せた選手たちは、夏の甲子園に雪辱を誓った。
3点のリードを許して迎えた4回裏、智弁和歌山の攻撃。無死一、二塁のピンチに、梅村(3年)が伝令に走った。マウンドに集まったナインに笑顔で語りかけた。
「西尾先生は絶対見に来ている。このピンチを切り抜けよう」
西尾吉春さんは26年間、伊万里商で監督や部長を務めた。念願の甲子園切符をつかんだことを喜び、球場で観戦するつもりだったが、3月2日に心不全で倒れ、62歳で亡くなった。
この日、秀坂常紀監督は、西尾さんの遺影と「一球入魂」の直筆色紙をバッグに忍ばせて試合に臨んだ。
マウンド上で、梅村の言葉に先発の多久島(3年)はこわばっていた表情を緩ませた。西尾さんが同校講師を辞める昨年3月までの1年間、指導を受けた。日焼けした笑顔が浮かび、自然と落ち着いた。
「そうだ、頑張ろう」。全員で帽子を掲げ、つばの内側に書いた合言葉「いい顔、いい声、仲間、我慢、強気」を見てグラウンドに散った。
多久島はコースをついた強気の投球で、4回を失策絡みの1点に抑えた。その後も得点圏に走者を背負ったが、追加点を許さなかった。
9回2死一、二塁、多久島は二ゴロに倒れ、最後の打者になった。試合後、「マウンドは楽しかった」と顔をほころばせながら、自分に誓った。
「夏こそウイニングボールを西尾先生に届けたい」