マウンド上の歓喜の輪が解けた。57年ぶりの連覇を果たした選手たちがベンチに向かって駆けるなか、林と抱き合った。背中をたたいて「よかったなあ」と言う自分の声も涙声だった。
入部したときからずっと一緒だった。元は同じ内野手。1年生春から練習試合で打ちまくる同級生には「すごすぎる」と感動さえした。同じ冬に右ひじを手術して、マネジャーに転身してからも、遠征に行くバスでは必ず隣に座った。
林も一目置いてくれた。昨夏の選手権準々決勝の試合前、トスバッティングのとき「悪いところを指摘して」と言われた。「ヘッドが下がり気味だな」。林は直後の試合でサイクル安打を達成した。
今春の選抜2回戦で敗れた後、林はピタリと打てなくなった。深紅の大優勝旗を全員で返しに行くとの重圧からだった。
「いい当たりだったな」「おまえは天才だよ」。いいところを見つけてはおだてた。一方で、道具の整備で遅くまで残っていると、照明が消えて真っ暗な中、一人でバットを振る林の姿を見た。「人一倍悩んで、でも人一倍がんばって重圧に耐えていた」
試合後、宿舎に戻るバスには深紅の大優勝旗が積まれていた。隣の席にはいつものように林。「お疲れ様」と声をかけた。「ありがとう。日本一のマネジャーにしてくれて」という意味も込めて。