勝利の瞬間、駒大苫小牧の松橋は珍しく派手なガッツポーズを見せた。「やっと自分の力で勝てましたから」。昨夏、今春と2度甲子園で登板しながら、ともに3回までに降板した右腕にとって、初めて味わう満足感だった。
1回の1球目。甲子園がどよめいた。聖心ウルスラの1番東を二飛に仕留めた直球は、スコアボードに「144キロ」と表示された。スピードは2番黒木の時、146キロまでアップ。この回、三者凡退に仕留め、初出場で意気込む相手の出ばなをくじいた。
投球は真っ向勝負だったが、心は冷静。初めて三塁に走者を置いた6回は、加藤に外角高めのボール球を打たせ、一邪飛。「今日はピンチでも楽しめた」という松橋に、聖心の石田監督は「高めに手を出すなと言っていたが……」。それだけ球威があった。
強打で優勝した昨夏は3年生投手2人に続く3番手の存在。しかし、エースとなった今年の選抜大会は2回戦で敗れた。失意から立ち直れず、制球難に苦しんだ。出口の見えない不振に退部すら考えたという。復調のきっかけは、やはり甲子園への思い。「もう一度、あのマウンドで投げるんだと言い聞かせた」。走り込みで復調の土台を築いた。
119球、被安打2で完封。捕手の小山は内容以上に「この勝利は大きい。松橋の好投は僕らに勇気をくれる」とうなずく。連覇を目指すチームが待ち望んでいたエースの好投だった。