5万人の大観衆が見つめた一戦。のびのびと輝いていた。胸を張って帰ってこい――。清峰は16日の3回戦で、優勝候補筆頭と目される強豪、大阪桐蔭と対戦し、1―4で敗れた。1回、相手に3点を許し、打線は大会屈指の左腕、辻内に8回まで2安打に抑えられた。だが、9回に主将の大石剛が本塁打を放ち、その後も満塁の好機を作るなど、最後まで食らいついた。
4点リードされて迎えた9回、先頭の大石剛が本塁打を放った。スタンドが一気に沸き返った。その後も大阪桐蔭のエース、辻内を追いつめ、内野安打と2四球で2死満塁の好機。9番の投手、古川が打席に入った。バッテリーを組んできた捕手の森が、耳打ちをした。「思い切って振っていけ」。力投を続けてきたエースにひと言伝えたかった。
2ストライクに追い込まれた。ファウルで粘るたび歓声が大きくなる。
辻内の152球目。直球に古川のバットが空を切った。三振。清峰の「夏」が終わった瞬間だった。
1回裏。古川は先頭打者に内野安打を許した。2死を取ったが、連続で四死球を与えて満塁のピンチ。
相手打線を警戒していた。「変化球を使って打たせて取りたいと思っていたが、狙いすぎた」。直球が真ん中に入る失投だった。鋭い打球は中堅手の大石剛の頭上を越えていった。一挙3点。甲子園で初めて相手に許した先制点だった。
5回の攻撃。2死二、三塁で古川が放った痛烈な当たりは、三塁線をわずかにそれ、ファウル。そこで清峰ベンチが動いた。得意とする足で揺さぶりをかけての得点を狙った。
仕掛けたのはディレードスチール。だが、相手は冷静だった。三塁走者の佐々木伸が本塁に突っ込むがタッチアウト。
その裏の守り。古川が先頭打者に本塁打を浴びた。三塁手の野元は悔やんだ。それまではピンチになるたびマウンドに駆け寄っていた。だが「雰囲気が悪いまま守備についたのに、あの時だけは何も言わなかった」。
快進撃を続けた清峰の柱は間違いなく古川だった。「楽しかった。甲子園は意外と普通だった」
目標はプロのマウンドだ。古川の新たな挑戦はここから始まる。