第87回全国高校野球選手権大会の初戦の2回戦(11日)で、前橋商(群馬)に3―5で敗れた熊本工。9回裏にはサヨナラのチャンスを作るなど、最後まで持ち味の粘りを見せた。「飛び抜けた選手はいない」と林幸義監督が話していた今年のチーム。全員野球で立ち向かった熱戦を振り返る。
「敷根がどれだけ踏ん張れるか」。試合前、林監督はポイントの一つにエースの出来を挙げた。
敷根は昨秋と春の県大会を制した立て役者。だが、春の九州大会のころからほぼ一人でマウンドを守ってきた疲れも影響し、右肩に違和感を覚えるようになった。フォームを崩し、熊本大会では本来の制球力や球の切れがなかった。
甲子園に向けて懸命に調整し、力投した。だが不運に襲われた。3回の打席で内角球を振った時に、球が右手親指に当たり、激痛が走った。腕の感覚を失い、直後の4回には失策と2連打などで2点を失い降板した。だが言い訳はしなかった。試合後「悔いはない」と話した。
やっとつかんだマウンドだった。「並々ならぬ努力を知っているし、先発は敷根でいく」。林監督は試合前にそう語っていた。昨夏の選手権にも出場した熊本工。だが、敷根は大会前の練習試合で大量失点し、ベンチ入りできなかった。「もう辞めようかと思った」と敷根。その時の悔しさを胸に、一人黙々と練習後、グラウンドで走り込んだ。初戦で敗れて悔しさは残ったが、忘れられない夏になった。
熊本大会の直前の練習試合で140キロを計測。「これで抑えは任せられる」と林監督の全幅の信頼を受けて熊本大会の全6試合で継投した前田は、甲子園出場の原動力となった。だが「球が切れていなかった」と振り返る前橋商戦。4回途中から登板したが、相手打線に安打を重ねられた。6回には2ランスクイズなどで3失点。敷根―前田の「2枚看板」で封じる「勝利の方程式」が崩れた。
相手を上回る11安打。「二ケタで3点か」。試合後、7番の二塁手、平松はこぼした。
序盤からチャンスを作った。だが、なかなか点に結びつかない。4番の松本が「良い当たりも正面に行った」と話すように相手投手をとらえたが、序盤は本塁が遠かった。5、7回も1点ずつにとどまり、9回の好機もあと一本が出なかった。「チャンスで結果を出さないと」。松本は試合後、肩を落とした。
片山主将は「前田はまだ2年生なのによくやった」と後輩をたたえた。他にも3安打の藤田、2安打の狩場ら甲子園の舞台で力を発揮した2年生が新チームに残る。「絶対に甲子園に戻ってきてほしい」と先輩たち。前田は「来年こそ、先輩たち以上の成績を残したい」と意気込む。熊本工の新たな挑戦が始まる。