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「県内ナンバーワン」という呼び声通りの活躍をした太田賢志投手=藤崎台 |
「お前しかおらんからな」
文徳の山川徹監督は試合前、エースの太田賢志投手に言葉をかけた。太田の持ち味は130キロ台後半の直球に加え、スライダー、シンカーなど多彩な変化球を変幻自在にコーナーに投げ分けること。
今夏の熊本大会前から、大会関係者の間では「県内ナンバーワン投手」との声も上がっていた。
実際、その言葉通りの活躍をしてきた。最初の「ヤマ」と見られた伝統校・熊本との2回戦では、相手打線につけいるスキを与えず、4安打完封勝利。準々決勝の八代工、準決勝の千原台でも完投勝利し、決勝進出の立役者の一人だった。
決勝の相手は熊本工。昨秋の熊本大会では準々決勝で、春の熊本大会では決勝で敗れており、「負けたくない相手」だった。
その初回、いつものように制球が定まらなかった。これまでの連投の疲れが出てきていた。四球や2連打などで、2死満塁に。迎えた打者は、6番平松潤。中軸に注意を注いでおり、「やられるとは思っていなかった」。ところが、中越え3点適時打を放たれた。
内角の厳しいコースを突くつもりが、「ボール一個分真ん中寄りに甘く入った」という2球目の直球だった。
2回には守備の乱れなどから1点、5回にも3連打で2点を失った。ようやく本調子を取り戻したのは、終盤になってから。重かった腕が振れるようになってきた。7回以降、打たれた安打は9回の一本だけだった。
結局、チームは9回にも1点を返し1点差に迫ったが、敗れた。チームメートが泣き崩れるのを横目に、太田はしっかりと前を向いていた。「悔しいがこれが実力」。そう思ったからだ。
この日投じたのは、148球。「やるだけは、やった」。熊本工相手に投げ抜いた太田の表情には、かすかに満足感すら漂っていた。