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力投した江口和郎投手=藤崎台 |
「また来年(こういう舞台に)戻ってこよう」
昨夏の熊本大会。江口は胸に誓っていた。水俣はノーシードながら、4強入り。準決勝で秀岳館に敗れたが、球場は大勢の観客の声援と独特の雰囲気に包まれていた。江口はその舞台に二塁で先発出場、継投で投手も務めていた。
「最後の夏」にかける思いは強かった。この日の熊本二との3回戦。江口は2回戦の松橋戦で完封勝利。この日も「調子は普通」だった。目標の舞台に立つまでは負けられなかった。
落とし穴は4回だけだった。真ん中に甘く入ったボールを連打され、1死一、二塁。「この試合で初めて弱気になった」。相手6番打者が初球の真ん中カーブを振り抜くと、打球は左中間へ。2人が生還した。打たれた瞬間「言葉がでなかった」。水俣にとっては重い2点になった。
その後は気持ちを切り替え、8回を投げて5安打2失点。得点を許したのは4回だけだったが、チームは1点に抑えられ、追いつくことができず敗れた。
試合後、ベンチ裏に戻ると「2人で切磋琢磨(せっさたくま)してきた」という3年の吉田が、泣き崩れていた。昨秋と春に肩を故障した江口はスタミナに不安が残り、「2人で今年の夏を乗り切ろう」と誓い合っていた。監督とも相談し、次戦からは2人で継投すると決めていた。
「ゴメン」。江口は吉田に言葉をかけた。「ナイスピッチング」。涙声で言葉が返ってきた。胸が熱くなり、江口のほおを大粒の涙がつたった。