第87回全国高校野球選手権大会は、高知代表に決まっていた明徳義塾が不祥事で出場を辞退し、開幕2日前に代表校が入れ替わるという異例の事態になった。だが、代わって代表となった高知は全国から注目される中で緊張に押しつぶされることなく、逆に舞い上がることもなく、はつらつとしたプレーで高知代表として立派な姿を見せてくれた。
代表決定の翌5日夕、50人近い報道陣が詰めかける中、宿舎入りした高知の選手たちの表情は硬かった。
中谷啓二主将は高知大会の優勝旗を手渡された時、カメラマンから「笑顔で」と求められた。後日、「そんな気持ちじゃないのに」と複雑な胸の内を明かした。選手たちの動揺はいかほどだっただろうか。
だが、6日の開会式から選手たちの表情は変わった。入場行進で3万2千人から温かい拍手を受け、大会会長のあいさつで「高知高校の皆さん頑張って……」と励まされると再び拍手がわき起こり、あとの言葉が聞こえないほどだった。
島田達二監督は「選手も保護者も引け目があったと思う。拍手で迎えてもらい、みんなほっとしたんじゃないですか」と胸をなでおろした。
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それ以降、選手は常に冷静で状況を楽しむゆとりすら持っているように見えた。「ここまで来たからには勝つ」。チームの士気は日を重ねるごとに高まっていった。
高知の選手たちの口から、何度となく「明徳義塾やほかの高知の高校生のためにも恥ずかしいプレーはできない」という言葉も聞かれた。代表としての自覚が選手を急速に成長させていた。
そして迎えた10日の第3試合。残念ながら2―6で敗れたものの、「百パーセントの力が発揮できた」と話す中谷主将は自信に満ちていた。「7日間で子どもたちは成長した。すごい財産をいただいた」。試合後の島田監督の感想だ。
監督は「試合しに来たからには絶対勝つ」と話していた。チームは勝ちに行き、最後まで本当に勝つ気でいた。「ダメもとのお客様」でなかったことは試合を見たすべての人が感じたはずだ。
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甲子園にはいろいろな人が様々な思いを抱く。純粋な目標だという人もいれば、次へのステップだとする人もいる。古くて新しい問題だが、時にほころびが表面化する。今回のできごとは高校野球の持つ危うさを再認識させる結果となった。
一方、明徳義塾の選手の潔い身の引き方、高知の選手の自分を見失わない姿は、いずれも自信を持ってよい立派なものだった。議論は今後も続くだろうが、どんな状況の下でも白球を追い求める球児こそが主役であることを忘れたくない。