ノーシードから激戦の兵庫大会を勝ち上がって11年ぶりの甲子園出場を果たした姫路工。念願の「夏1勝」の夢は酒田南打線の前で阻まれた。だが、特別な選手のいない県立校の全員野球は、私立優位といわれる高校野球で、ひときわ新鮮に映った。
沢山主将は「チーム力で8試合を勝ち抜いた」と話した。その言葉通り、突出した選手はいない。兵庫大会の前評判でも、全国屈指の好投手を擁する私立強豪校や、体育科のある公立校と比較すると、際立った存在ではなかった。
快進撃の姫路工を率いた福井監督は「試合を重ね、成長してくれた」と振り返る。就任から26年。厳しい指導の一方で、選手からは慕われていた。「16日の監督の誕生日を甲子園で」が、彼らの合言葉だった。
「グラウンドのトイレ掃除は畑井が進んでやってますよ」。福井監督はうれしそうに語った。エースら中心メンバーが率先することで、下級生が見習うようになるという。「毎日何時間も野球に費やして、技術と根性以外に何も身につかないようでは高校野球の意味がない」。そんな監督の姿勢は応援する側にも表れ、試合後の姫路工のスタンドはゴミ一つ残っていなかった。
普通の高校生たちが厳しい練習と試合を通じて、技術だけでなく精神的にも成長し、夢の舞台に立つ。姫路工に高校野球の原点を見た気がした。