8日の第4試合(1回戦)で茨城代表の藤代と対戦した柳川は、延長12回の末、2―3で惜敗した。敗れはしたが、エースの左腕渡辺は内野ゴロの山を築き、前評判通りの制球力を披露。内野も堅守でもり立てた。攻撃でも強打や足といった持ち味をいかした。カクテル光線の中で続いた緊迫の展開に、試合後もスタンドから惜しみない拍手がやまなかった。
1回裏2死一、二塁。打席に入った5番沢田は6球目、内角に来た変化球を思い切りたたいた。2点先制の右越え二塁打になった。
沢田には、この日、打ちたい理由があった。
試合前日の7日、兄の結婚式が久留米市であった。甲子園出場で出席できないから、福岡大会で優勝を決めてすぐに電報を準備した。「兄ちゃん、結婚式には出席できなくて残念だけど、甲子園で最高の活躍ができるように頑張るから」と。
7日夜、兄に電話した。兄は「電報を読んで思わず泣いた。絶対、明日は打ってくれよな」と電話口で声を弾ませてくれた。新婚旅行で兄は甲子園に来られないが、「次に勝てば行くよ」と約束してくれた。
「約束を果たすためにも絶対勝ちたい」。沢田君は塁上で勝利を信じた。
8回に2点を追いつかれ同点に。藤代のエース湯本は尻上がりに調子を上げ、延長戦に突入した。
エース渡辺は中盤以降、握力がなくなり、変化球の切れがなくなった。直球の速度を変えて相手打者のタイミングを少しずつずらしていた。
9回裏2死二塁。サヨナラの好機が訪れた。二塁にいるのは佐々木。身長153センチ。50メートル走5秒8の足はチーム1だ。
打者は9番の投手、渡辺。3球目を振り抜くと打球は左翼へ。三塁コーチの宮内は「回れ」と腕を回した。佐々木はその合図が見えなかったが、思い切り走った。「2アウトだし、相手も焦るはずだ」。だが、相手の正確な中継プレーで本塁でタッチアウトに。
12回表、ピンチが訪れた。1死二塁。藤代の1番の強い当たりが遊撃手の斎藤を襲った。
末次監督が「九州ナンバー1のショートストップ」と評す斎藤。このとき、二塁走者が目に入った。「しまった」。その瞬間、打球は斎藤のグラブの下をするりと抜けて中前に。試合後、斎藤が悔やんだ。「あれさえ取っていれば」
試合が終わって、堅守で渡辺を支え続けた内野陣を末次監督がたたえた。「投手は悪くなかったし、守備も良かった。いい試合ができた」