ここから本文エリア

甲子園 夢トーク

甲子園 夢トーク

君の腕は未来の宝 自己管理、何でも試して

2008年01月25日



 球史に残る名勝負を演じた投手や監督らが、現役高校球児に、熱いメッセージを送った。全国高校野球選手権大会が今夏で90回を迎えることを記念し、障害予防をテーマとしたシンポジウム「熱投の秘密」が13日、大阪市のNHK大阪ホールで開かれた。近畿を中心に14府県、276校から1269人(高校生992人、指導者277人)が集い、熱心に耳を傾けた約3時間半。第1部では、40歳を迎える今季も大リーグに挑む桑田真澄投手(大阪・PL学園OB)が、日本高校野球連盟の越智隆弘副会長(整形外科医)と対談。けが予防の大切さや、野球選手としての心構えを語りかけた。第2部ではプロ野球ロッテの立花龍司・ヘッドコンディショニングコーチが、野球がうまくなるためのトレーニング法を指導した。その詳細を報告する。

写真桑田真澄投手(右)と越智隆弘さん
写真  
写真  

    ◇

 越智 桑田さんはPL学園高1年で夏の選手権大会で優勝し、5季連続甲子園出場など、大変な記録を作ってこられた。それでも、入学当時は大変悩まれたとか。

 桑田 自信を持って入学したが、清原(和博)君(現オリックス)をはじめ、体が大きく力のある選手がたくさんいた。レギュラーになるのは難しいとあきらめかけた。母にやめたいと話すと、「大事なのは最後までやり通すこと」と言われ、我に返った。自分の出来ることを精いっぱいやろう、と。その意識で3年間を駆け抜けた。

 越智 体格も決して大きくない桑田さんが、工夫されたことは。

 桑田 野球は体格でやるわけではない。無差別級の競技ですから、自分を最大限に生かすことを考えた。小さくても体全体の力を上手に使うことを考えれば、必ず、大きな選手、力のある選手に追いつき、追い越せる。僕にとっては、清原君と出会えたことは大きかった。力じゃかなわない。そこで、投球フォームも打撃も守備も、体全体をバランスよく使う方法を試行錯誤しながらつくっていきました。

 越智 高校から、自分で考えて自己管理をされていたと聞いています。

 桑田 今は情報がたくさんある。大事なのは、自分自身に合っているかどうか。とにかく、すべてやってみる。自分の目で見て、触れて、感じてみるのが大事。100人いたら100通りのフォームがあり、コンディショニングの仕方がある。監督やコーチに言われるままではなく、自分で勉強しながら取り組んでほしい。

 越智 指導者、選手自身に正しい知識がなければ、選手の能力が花開く前に壊れてしまうことがある。私はプロ野球阪神のチームドクターとして、投手が高校までにひじを壊し、後遺症を抱えている例をいくつも見た。それで日本高野連と協力し、肩・ひじの検査をするなど、障害予防対策に取り組んできました。

 桑田 すばらしいですね。ただ、大切なのは、選手本人が自分は今どういう状態かを把握すること。ぼくは今でも、必ずストレッチで体をチェックする。昨年右足首を手術したので、朝起きたらまず足首の可動域を確認し、右肩とひじの状態をみる。時間があれば、散歩にいって体調を確かめて、練習に入る。そうした小さな積み重ねが、自分の財産になる。

    ◇

 越智 投球フォームで工夫されたことは。

 桑田 「共同募金の法則」ですね。1人で100万円集めるのは大変だけど、1000人、1億人で100万、1000万集めるのはそんなに難しくない。筋肉も、ある1カ所に全部仕事をさせるのではなく、いろんな所が1ずつやれば、トータルで10になる。いろんなフォームを試し、自分に合うものを見つけてほしい。

 越智 現在は多彩な変化球をお持ちですが、高校時代は直球とカーブだけで勝負したとか。

 桑田 スライダー、フォークも投げられましたが、将来を考えて、あえて無理はしなかった。真っすぐとカーブだけだと、ピンチもたくさんあった。清原君から「スライダーを使えば打たれへんで」と言われたこともあったけど、そこは技術よりも心を育てようと。一球入魂と言いますが、自分の気持ちを最大限にボールに込めて投げました。

 越智 投げ込みについてのお考えは。

 桑田 ある程度投げるのは大事。ただ、1カ所に負担がかかるフォームでずっと投げると、必ず故障する。体全体を使う意識で投げること。20歳くらいまでは成長するので、この時期に絶対に無理してもらいたくない。

 ぼくは3年の春、肩がおかしい時期があった。監督に話して、一切ボールを握らずランニングだけした。目先の1勝も大事だけど、将来はもっと大事です。君たちは球界の宝物。ぼくの大切な後輩でもある。痛い時は勇気を持って指導者に報告する。絶対に高校野球でつぶれないで下さい。

 越智 桑田さんはよく走ると聞いています。

 桑田 常に頭に置いているのは、このランニングは何に必要か、ということです。例えば20分のジョギングでは、疲労を除去する。100メートルダッシュの時は、1本目は野球の1回、7本目は7回のつもりで走る、という具合です。

    ◇

 越智 それだけ自己管理をしていても、けがをしてしまうことがある。

 桑田 けがはショックです。ただ、スポーツにはつきもの。落ち込むのではなく、プラスに変えて欲しい。けがにより、体の仕組みや、その部位を鍛えるトレーニングを覚えることもできる。

 越智 最後に、高校球児にアドバイスを。

 桑田 二つお話ししたい。一つは失敗してもいい、ということ。野球は失敗するスポーツ。マリナーズのイチロー君だって、6割、7割は打てない。半分以上はミスをする。投手だって構えたところに100球投げられない。半分以上ずれるんです。大事なのは起きあがることです。

 もう一つは、野球を通じて自分を磨くこと。高校生は勉強も大事。授業中はベストを尽くす。練習をして、学校では一生懸命勉強する。とても大事なことだと思います。



このページのトップに戻る