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asahi.com認定 高校野球マスター養成講座

第8回満塁策を甲子園で最初に行ったといわれているのはどの学校?
(2007年8月7日)

講師:森岡浩

学習のポイント

野球の作戦や高校野球ルールの成り立ちを知る

 スクイズ、エンドラン、犠打など、野球にはいろいろな作戦がある。今は普通に行われていても、最初に考えた人には大発見だったはずだ。そこで問題。

練習問題
絶体絶命のピンチで採用する満塁策。甲子園で最初に行ったといわれているのはどの学校?
  1. a. 福岡中 (岩手県)
  2. b. 早実 (東京都)
  3. c. 中京商 (愛知県)
  4. d. 神戸一中 (兵庫県)
解答&解説

 走者が三塁におり、一打サヨナラという絶体絶命の場面で採用されることが多い満塁策。今ではどのチームも当然のように行うが、昭和初期に、これがルール上問題なく実際にも有効だと最初に気づいて実行した選手がいる。それは、岩手県立福岡中学(現・福岡高)の村田栄三選手である。


1927年8月19日の大阪朝日新聞夕刊より。
「投球の玄妙」「筆者久しぶりに目の正月をなす」と絶賛

 福岡中学は1927年(昭和2年)夏に初めて甲子園に出場、その時の捕手が村田栄三であった。初戦で桐生中学を下したあと、準々決勝で高松商と対戦。0−0で迎えた9回裏、1死三塁というサヨナラのピンチを迎えると、村田は戸来投手に2者敬遠を指示した。村田は明大の天知俊一(のちの中日監督)から「サヨナラ負けなら2点入っても同じなので、満塁にした方が守りやすい」という秘策を教わっていたのだ。

 戸来が2人連続して敬遠すると、これまでこのような策を見たことがなかった観客はどよめいた。次の打者に対し、村田は2球目をウエストさせてスクイズを外し、飛び出した三塁ランナー(後に巨人で活躍する水原茂)を刺して2死。そのまま打者を三振に打ち取り、ピンチを切り抜けた。三本間で挟殺という結果となったため、封殺もしくは併殺を狙う満塁策そのものは活きていないが、これが甲子園初の満塁策とされている。なお、福岡中はこの試合、延長12回の末に0−1で敗れている。

 ということで、この問題の正解は、a.の福岡中。

 ちなみに、松本深志高の野球部史である「松本中学校 松本深志高校 野球部の1世紀」によると、日本で初めてスクイズを決めたのは、松本中学(松本深志高)で、1906年(明治39年)のこととされている。

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練習問題
1920年(大正9年)夏の甲子園に出場した鳥取中学に認められた珍しいルールとは?
  1. a. 投手が1メートル手前から投げた
  2. b. 内野フライはとれなくてもアウト
  3. c. 打者のかわりに別の選手が一塁に走る
  4. d. 打者が球種を要求できた
解答&解説

 高校野球黎明期は、現在のような厳格な規定が確立されていなかった。たとえば選手資格は、在学する学校の校長が認めればよく、19歳の選手や、本来は別の学校の在籍者なども出場することができた(選手権大会の選手資格が制定されたのは1922年(大正11年)のことである)。

 試合の運営でも、両校が納得すれば、本来のルール外でも認められたようだ。その典型が、1920年(大正9年)夏の大会の、鳥取中学(現・鳥取西高)対関西学院中学(現・関西学院高等部)の試合である。

 「鳥取西高野球部史」によると、この大会、鳥取中学の坂本捕手は激しい脚気となり、満足に走れない状態に陥った。そこで、準々決勝では相手・京都一商の了解を得て、塁に出ると代走を出し、次の回にはまた坂本が守りにつくことにした。しかし、6回に坂本が出塁した際、京都一商は臨時代走として投手を指名し、翌日の朝日新聞紙上にて批判されている。


1920年8月19日の大阪朝日新聞夕刊より。
関西学院中が鳥取中・坂本捕手の代走を提案

 次の準決勝で対戦した関西学院中学は、坂本選手の打席に限っては本塁からの代走もOKと提案した。つまり、坂本の代わりに最初から代走が走ってもよい、というのだ。鳥取中学はこの提案を受け入れ、坂本の隣に別の選手が待機して、打つと同時に走り出す準備をしていた。しかし坂本は最初の打席で死球を受けてそのまま退き、代走の出番はなかった。そもそも関西学院中学がこうした提案をした理由は、同校のエースも肋膜炎をわずらっていたからだという。

 大正時代は各校野球部の選手数はまだ多くなく、主力選手が病気になるとチーム編成にも事欠き、試合ができないこともあった。

 1922年(大正11年)に地方大会を制した新潟商は、なんとエースの病気という理由で、全国大会出場を断念している。選手の病気を理由に学校が出場を辞退したのは、この他には一度もない。

 従って、この問題の正解は、c.の打者のかわりに別の選手が一塁に走る、である。

《註》
※本講座では、「全国高校野球選手権大会」を「夏の大会」、「選抜高校野球大会」は「春の大会」「選抜」と表記
※特に断りがない限り、“甲子園”とは他の球場で行われた試合も含め、春夏の全国大会すべてを含む

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