第93回全国高校野球選手権大会
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守る意識浸透、強豪と互角に 能代商の戦い振り返って2011年8月18日0時32分 参加4014校。その中で16強に進出した能代商。昨夏の大敗、秋田代表の初戦13連敗など、全く感じさせない快進撃だった。有望選手が集まったチームではない能代商が大舞台で、強豪校と互角に戦い、観客の記憶にも、秋田県の高校野球史にも残る熱戦を繰り広げた。日本高野連や関係者からも「高校野球の見本になる、いいチームだった」と高く評価された。 「試合の反省を次に生かす」。しかし、簡単なことではない。特に「負ければ終わり」の夏の高校野球では、何が勝敗を左右するか分からない。だが、その反省を、能代商の工藤明監督(35)と選手たちは見事なまでに体現させた。 「原点」は1年前にさかのぼる。鹿児島実に0―15。イニングスコアを室内練習場に張って練習した。2年連続の優勝を喜びつつも冷静だったのは悔しさを忘れていなかったからだ。 秋田大会前からチームを見てきた私は、「甲子園に『また行きたい』のではなく、『勝つ』という意識が選手に浸透している。ほかのチームと少し違う」と感じていた。ただすべてのチームが優勝を狙う中で、勝てるかどうか分からなかったが、やはり2年連続は見事というしかなかった。 一方で、「また大敗するのではないか」という声があったのも事実だ。実際、甲子園に来ると、体格は能代商を上回るチームばかり。選手が「食べて体が大きくなった」と言っても、ほかを見ると、ユニホームがはち切れんばかりの腰回り、がっしりした肩幅。球速は140キロ台を連発。打球も快音を残して速い。全国レベルの高さを感じた。 心配は杞憂(きゆう)に終わった。くしくも1回戦は鹿児島実と同じ鹿児島代表の神村学園。目標にしてきた「パワーとスピード」がどれだけついたかを試す絶好の相手だった。先制されたが、6回表に逆転。主戦保坂祐樹君(3年)も粘り強く投げ抜いた。この逆転劇も原点がきっかけになっている。6回の攻撃前、工藤監督が「1年間悔しい思いをしてきた。何も出さずに終わるのはやめろ」と選手を叱責(しっせき)。生まれ変わったような集中打で5―3で下した。 2回戦の英明(香川)戦では本来の守り勝つ野球を見せた。大会屈指の左腕から少ないチャンスを生かして2点。保坂君も完封。普段通りの野球をやってのけた。 そして如水館(広島)戦。能代商はすべてを出し尽くした。守り勝つ野球の真骨頂は2度の奇跡のバックホームだ。9回裏の中堅手吉野海人君(3年)―遊撃手畠山慎平君(2年)―捕手平川賢也(2年)と渡った1回目、10回裏の主将で右翼手山田一貴君(3年)―一塁手岳田諒平君(2年)―平川君とつながれた2回目。4万7千人の観衆を魅了したプレーだった。工藤監督は「田舎の普通の高校生のチーム」と言った。そんな選手たちが全国の強豪を倒し、互角に戦う。見ていて爽快だった。 如水戦後、保坂君は気丈に笑顔を見せながら「すべてを出し切った」。一方で2年生の畠山君は「こんな負け方では……。次は甲子園で優勝するしかない。新チームで必死にやっていく」と悔し泣きした。工藤監督は「負けて納得できる試合はない。勝てる試合だっただけに余計に悔しい」。選手の言葉も監督の言葉も、すべて素直に受け止められた。「これが高校野球の素晴らしさ」。実感させてくれた夏だった。(伊藤あずさ) こんな記事も
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