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ここから本文エリア 石川ニュース〈特集〉 〈門前から挑め!夏4〉4番、今年こそ「長い夏」に2007年07月10日 6月23日朝、輪島市門前町にある門前高校グラウンド。晴れ渡った空の下、部員たちは午後の飯田高校(珠洲市)との練習試合を前に意気込みを話していた。「一平、三振」。負けず嫌いのエース、山本健太(17)が「一平を三振に打ち取る」と宣言した。「一平」とは、門前中で山本たちとチームメートだった飯田の4番、伊藤一平(17)のことだ。「リアルやなぁ」。ほかの部員が笑う。しかし山本の顔は真剣だ。
◇ 伊藤は門前町剱地出身。高校から飯田に進学した。中学野球で県内強豪の緑丘中(珠洲市)から飯田に進学する部員が多い、と聞いていた。飯田はほとんどが4年制大学に進学する、能登の進学校の一つでもある。全校生徒数も391人と門前の倍以上の規模だ。「飯田に行けば、部活も勉強も両立できる」。門前を出て、珠洲市内で一人、下宿をしながら通学している。 下宿生活は慣れないことだらけだった。洗濯など身の回りのことはもちろん自分でしなければならない。戸惑うことも多かった。しかし「いい経験になるはず」と前向きに取り組んできた。 同じ下宿先に二つ上の主将がいたことも心強かった。先輩について朝と練習後、毎日素振りをした。1年夏からレギュラーに入り、以来ずっと4番に座り続けてきた。 ◇ 午後、珠洲市蛸島町の市営球場で練習試合は始まった。伊藤はこの日も4番の打席に立った。 門前には門前中野球部の同学年9人のうち、6人がいる。その仲間が見ている。この試合で打ちたい。そして頑張ってきた自分の姿を、門前のみんなに見て欲しい――。そう思えば思うほど、力が入った。 一方で、伊藤を迎え撃つ門前のエース山本は中学までは外野手だった。高校から志願して投手に転向。下半身強化のための走り込み、変化球の練習と、高校に入ってからの2年数カ月、伊藤に負けず劣らず努力してきた。 山本も伊藤には負けたくない。「中学の頃から人一倍パワーがあった打者だ。甘い球が入ればすぐに打たれる」。制球に気を付けた。 2人とも途中で交代したため、対決は5回までの3打席だった。1打席目は内野ゴロ。2打席目は内野フライ。3打席目は外野フライ……伊藤は力んで打球が詰まり、3打数無安打に打ち取られた。 試合は結局13―4で飯田の勝ち。だが伊藤の心は晴れなかった。門前が相手だと、どうしても力んでしまう。小学校から野球を教えてくれている父が試合後に伊藤に言った。「どんな相手でも、いつも通りできるようにしないと駄目だ」 悔しかったが、夏に向けて平常心を保つことの大切さを一つ学んだ試合となった。 ◇ 石川大会の開幕が近づく。飯田は、一昨年の夏は開幕日第2試合の1回戦で野々市明倫に1―10の7回コールド負け。昨夏は1回戦で羽咋工に7―18で5回コールド負け。2年とも、あっという間の夏だった。ここ3年間、初戦を突破していない。 今年こそ、“長い夏”にしたい――。伊藤は「得点に絡むヒットを打つのが4番の仕事だ。打撃でチームを引っ張る」と決めている。門前を出て頑張ってきた日々すべてをこの夏にぶつけ、チームをベスト8に導くのが目標だ。 抽選の結果、門前はAゾーン、飯田はDゾーンに入った。お互いに決勝まで勝ち上がらないと対戦できない組み合わせだ。それでも1回戦をどちらも突破すれば、21日の2回戦が同じ金沢市民野球場での試合になる。「お互い、初戦しっかり勝とうぜ」。次は球場での再会を誓い合った。 =敬称略 |