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高校野球総合ニュース

体罰を考える・高校野球の現場から1 成果求め情熱暴走

2006年06月12日

 朝日新聞社が高校野球の指導者を対象に実施した「指導に関するアンケート」で、指導に悩みながら、6割の指導者が体罰を容認していることが分かった。日本高校野球連盟は昨夏、「指導者の暴力はいささかも許されるものではない」とする緊急通達を出した。暴力根絶に向けた取り組みを訴える一方で、不祥事の報告は相次いでいる。なぜ、問題は繰り返されるのか。指導の現場を追った。

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丘の上にある、おかやま山陽高校野球部のグラウンド=岡山県浅口市で

◆裸ランニング

 岡山地裁倉敷支部の法廷に5月23日、おかやま山陽高校の野球部元監督、池村英樹被告(35)が立った。野球部員に暴力をふるい、無理やり全裸でのランニングをさせたとして、暴行と強要の罪に問われていた。

 「全裸で走るよう指示はした。しかし、強要罪は成立しない」。はっきりした口調で、強要罪を否認し、暴行も一部否認した。

 中学生のころから野球の指導者になることを夢見てきた。

 念願がかない、母校の沖縄県立那覇の監督となった。00年夏には沖縄大会で優勝、甲子園に出場した。左利きの捕手、三塁手の起用、アッパースイングの奨励など、型破りなチームは話題となった。しかし、教諭を監督にという学校の方針もあり、その秋に辞任した。

 1年ほどたっておかやま山陽から誘われ、02年、監督に就任した。高卒で、教員免許も持っていないため、立場は学校職員。検察側によると、「4年以内に甲子園出場を果たさなければ、解任」という契約だった。

 部員は髪を染め、眉をそっていた。ユニホームは洗わず、あいさつもできなかった。

 今は東海地方に住む池村元監督は「最初に手を上げたのは、就任した夏。何度注意しても選手が眉毛をそってきた。反射的に、平手で顔をたたいた」と話す。

 部員の態度は変わった。当時の部員の保護者は「体罰を含め、指導に感謝している」と語る。

 営業職として沖縄で働き、悩んでいたころ、離島で服を脱ぎ、裸で海を泳いだことがあった。「自分はなぜ、こんなことで悩んでいたのだろう、と一皮むけた思いがした」

 おかやま山陽のグラウンドは丘の上にあり、人目はない。自分の経験も説明し、生徒を裸で走らせた。裸ランニングはその後も何回かあった。

 次の年、野球部強化のために大阪や九州から集まった生徒たちが入学。グラウンド横の寮で一緒の生活が始まった。そこでいじめや窃盗、喫煙などの問題が起きた。

◆「裏切られた」

 5月、初めて拳で部員を殴った。体罰は次第に当たり前のものとなった。「暴力がいけないことは分かっている。だが、高校の3年間という制約の中で指導するために、ある程度の体罰は必要、と考えるようになった」

 就任から3年たった05年6月、部員の喫煙や窃盗を告発する投書が日本高野連に届いた。責任をとって監督を退いたが、引き続き寮に残った。

 しかし、保護者が学校に体罰や裸ランニングを訴えたため、9月1日付で辞職。保護者は「元監督の行動はあまりにも理不尽で、常軌を逸している」と警察にも告訴し、11月に逮捕された。

 高校野球の練習が刑事裁判にまで発展したのは異例のことだ。那覇時代を知る保護者の一人は「野球に関する情熱はすごいが、野球以外のことは知らない。大人としての対応ができない」と残念そうに語った。

 訴えた保護者はいまでも、怒りが収まらない。

 「信用して子供を預けたのに、裏切られた。このまま指導の現場に復帰したら、再び被害者を生んでしまう」

   *

 <「高校野球の指導に関するアンケート」> 朝日新聞社が全国の4214校の硬式野球部の指導者を対象に実施し、60%の回答を得た。8割が指導で「心の育成」を最も重視すると答えた一方、6割が体罰を容認する回答をし、約7割が「体罰の経験あり」とした。

(6月9日付大阪本社版から)


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