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〈球児たちの夢5〉 熱い視線1000試合

2006年07月15日

 「惜しいな」

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バックネット裏から練習試合を見つめる佐藤悠二さん=焼津市で

 そうつぶやきながら、バックネットに張り付くようにしてスコアを取る男性がいた。ひとつひとつのプレーに、鋭い視線を送る。6月下旬、佐久間高校の練習試合。

 野球部OB会事務局長の佐藤悠二さん(63)だ。野球部の3期生で、三塁を守っていた。授業中にボールを縫った思い出もある。最後の夏は、1回戦敗退だった。

 当時は他校まで行くのが大変で、練習試合は年に10試合ほどしかできなかった。佐藤さんによると、今はバスを使って移動し、年間約80試合をこなす。「田舎のハンディはなくなったかな」

 ある選手の保護者いわく、「不思議なおじさん」。90年以来、佐久間高の春、夏、秋の公式戦はもちろん、ほとんどの練習試合を見続けてきた。

 その数、「千試合くらい」。

 ただ観戦するだけではない。つけたスコアをもとに、後日、投手や打撃の記録、試合の流れなどをパソコンで編集し、印刷して選手や保護者らに配っている。

 ちなみに、佐藤さんがまとめた創部以来の公式戦の成績は、88勝187敗1分。

 試合を見続けているのには訳があった。

 ある年の夏の大会。佐久間高は先発投手が打たれて1回戦で敗退。「なぜあの選手を先発させたのか」。保護者から不満の声が上がる。

 当時の監督はこう答えた。

 「彼は入部したときはキャッチボールも満足にできなかった。ずっと頑張ってきたので、試合に出した。夏の1試合だけを見て判断されては困る」

 胸が痛んだ――。佐藤さんは振り返る。監督の言うことは、もっともだと思った。

 選手の成長を見続けよう。球場に通うようになった。スコアをつけるのも「記録を取ることで選手の励みになれば」と考えるからだ。

 「野球選手の幸せは分からない」と佐藤さん。地元の有力選手の引き抜きは激しいという。昨夏の静岡大会で、ある強豪校のバッテリーは佐久間高に近い中学の出身だった。

 「有名校に行って控え選手で終わるのもいい。有名校でないところで、ずっとレギュラーで楽しむのもいい」

 夏の大会には、地元の人が大挙して球場まで応援に来てくれる。「どこにこんなに人がいたかと思うほどですよ」。まちを離れ、全国各地に暮らす人から連絡が入ることも多い。みんなが一つになって盛り上がれるところが、夏の高校野球の良さだと思う。

 最後に、この夏について。

 「みんな2勝してと言う。私もしてほしい。でも、まず1勝が大事」

 63年以来の、1大会2勝以上がなるか。佐久間高は16日、浜松東高との初戦に臨む。―おわり(磯崎こず恵)

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